日本乳癌検診学会誌
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第32回学術総会/シンポジウム1 リスク層別化乳がん検診の基礎
危険因子に着目した膵癌早期診断プロジェクト
花田 敬士
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2023 年 32 巻 1 号 p. 1-4

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抄録

予後が不良とされる膵癌の治療成績の改善には早期診断が必須であるが,膵癌に対する検診の方法と効果は検証されておらず,一般集団に対するスクリーニングは推奨されていない。一方で,2006年に日本膵臓学会から『膵癌診療ガイドライン』が創刊され,科学的根拠に基づく危険因子が発出された。当院が所属する広島県尾道市医師会では,2007年から危険因子に着目し病診連携を活用した膵癌早期診断の取り組み(尾道方式)が開始された。危険因子を有する患者を中心に血液検査や腹部超音波(US)などを介入し,異常所見が見られた場合や膵の描出が不十分な場合,積極的に中核施設に紹介する取り組みである。開始から15年が経過したが,早期診断例の増加,外科的切除率および5年生存率の改善などの成果が報告されている。近年,国内30カ所以上で同様の取り組みが開始されており,大阪地区,岸和田地区などでは尾道地区と同様の成績が報告されている。以上の結果から,危険因子に着目した膵癌早期診断プロジェクトは膵癌の予後改善に繋がる可能性が示唆される。

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