日本乳癌検診学会誌
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32 巻, 1 号
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第32回学術総会/シンポジウム1 リスク層別化乳がん検診の基礎
  • 花田 敬士
    2023 年 32 巻 1 号 p. 1-4
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/03
    ジャーナル 認証あり
    予後が不良とされる膵癌の治療成績の改善には早期診断が必須であるが,膵癌に対する検診の方法と効果は検証されておらず,一般集団に対するスクリーニングは推奨されていない。一方で,2006年に日本膵臓学会から『膵癌診療ガイドライン』が創刊され,科学的根拠に基づく危険因子が発出された。当院が所属する広島県尾道市医師会では,2007年から危険因子に着目し病診連携を活用した膵癌早期診断の取り組み(尾道方式)が開始された。危険因子を有する患者を中心に血液検査や腹部超音波(US)などを介入し,異常所見が見られた場合や膵の描出が不十分な場合,積極的に中核施設に紹介する取り組みである。開始から15年が経過したが,早期診断例の増加,外科的切除率および5年生存率の改善などの成果が報告されている。近年,国内30カ所以上で同様の取り組みが開始されており,大阪地区,岸和田地区などでは尾道地区と同様の成績が報告されている。以上の結果から,危険因子に着目した膵癌早期診断プロジェクトは膵癌の予後改善に繋がる可能性が示唆される。
  • 大谷 彰一郎
    2023 年 32 巻 1 号 p. 5-9
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/03
    ジャーナル 認証あり
    (1)日本は欧米諸国と比較すると乳癌の罹患率,死亡率は低いが,年々罹患率は増加傾向にあり,女性の癌の罹患率で第一位である。2019年の全国がん登録データによると乳癌の罹患者数は9万人を超えている。一方,2019年までは日本人女性の癌の死亡数では乳癌は部位別では,大腸,肺,膵臓,胃に次いで第5位であったが,2020年より大腸,肺,膵臓に次いで第4位となりその順位は2021年も変化なかった。 (2)乳癌の発症リスクにはアルコールや喫煙や肥満の生活習慣のほかに,家族歴,既往歴,増殖性乳腺良性疾患,高線量の被曝などが関連する。 (3)乳癌を予防するためには,喫煙やアルコール摂取を控え,閉経後の肥満を避けるために体重を管理し,身体活動量を増やすことが重要である。
  • 津田 均
    2023 年 32 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/03
    ジャーナル 認証あり
    画像診断とコア針生検,吸引生検の普及により早期乳癌の検出率が向上した。同時に微視的な乳管・小葉内の増殖性病変も多数見つかるようになり,このような病変の分類が行われた。その中で高リスク病変とされる異型乳管過形成(ADH),異型小葉過形成(ALH),非浸潤性小葉癌(LCIS)については,針生検で診断がなされた後,病変を含む組織の切除生検が推奨されていたが,方針が徐々に変わりつつあり,近年は経過観察の安全性が検討されている。乳管内乳頭腫においても異型の有無によりリスクが異なることは従来から示されてきた。日本人女性に関する高リスク病変に関するデータはほとんどないことから,病理学的理解と周知をさらに深め,適切なマネジメントに関する研究を推進していくことが必要と思われる。
  • 植松 孝悦
    2023 年 32 巻 1 号 p. 17-25
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/03
    ジャーナル 認証あり
    日本の乳がん検診は,欧米のデータで乳癌死亡率減少効果が唯一証明されている検診マンモグラフィを40歳以上の女性に対して2年に1回施行するという画一的な方法を推奨している。既に検診マンモグラフィを施行して20年以上経過しているが,今もなお日本人女性の乳癌死亡率が増加を続けている事実から現行のわが国の乳がん検診制度が最適とは言えない。検診マンモグラフィ一辺倒である現行の考え方からのパラダイムシフトが必要である。日本の次世代乳がん検診はブレスト・アウェアネスの啓発を行うとともに,組織型乳がん検診を土台とするリスク層別化乳がん検診を導入することで乳癌死亡率減少効果のある,受診率の高い,適切な乳がん検診に変貌することが可能かもしれない。さらにJ―START は,リスク層別化乳がん検診のランダム化比較試験であるという解釈が広く理解を得られるようになれば,40~49歳の日本人女性に対しての超音波検査併用検診マンモグラフィが感度向上,早期浸潤癌発見率向上,中間期癌減少を証明しているので,日本人女性の乳癌死亡率減少効果を期待できる新しい乳がん検診の有用な手段/方法としてその早期導入の方策を具体的に議論することが可能となる。
第32回学術総会/シンポジウム2 対策型乳房超音波検診へ
  • 中井 昌弘
    2023 年 32 巻 1 号 p. 27-30
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/03
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    J―START のセカンダリエンドポイントの結果公表前から,市区町村でMG+US 併用検診が実施されるまでの流れと現在の課題を解説する。【流れと課題】J―START の結果公表前の課題は,「がん検診のあり方に関する検討会」で,乳がん検診の有効性評価の指標にセカンダリエンドポイントの累積進行がん罹患率が認められるかである。認められれば,次の段階に進める。次に,結果公表で有意差を認めれば,国立がん研究センター内に「乳がん検診ガイドライン作成委員会」が発足する。しかしガイドライン作成の開始時期や作成期間は不明で,さらに研究結果が1件しかないのも課題である。MG+US 併用検診の推奨が決まれば,厚生労働省等の手続きに入る。「がん検診のあり方に関する検討会」で,MG+US 併用検診が実際に市区町村検診として実施できるかかが検討され,可能と判断されれば,関連法令や運用方法等が更新され,国会等の手続き後,関係諸機関(市区町村,検診機関等)に通知される。これらと同時進行で,MG+US 併用検診を普及,実装するためのマニュアル作成が必要であるが,すでに関連する学会等で,実際の運用方法や診断までのルールの確立等の準備がされている。最後に,市区町村は,住民に検診方法を周知し,契約書・仕様書を作成し,検診機関と契約する。検診機関は,契約書・仕様書に基づいて,検診を実施する。【結語】結果公表前から実施までには,多くの課題を認める。
  • 鈴木 昭彦, 石田 孝宣, 原田 成美, 佐藤 章子, 塩野 洋子, 大内 憲明
    2023 年 32 巻 1 号 p. 31-34
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/03
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    乳がん検診の目的は乳がん死亡率の減少であり,検診方法として政策に反映するためには死亡率減少のエビデンスが必須とされてきた。乳がんは発病からその予後が確定するまでの期間が比較的長期間にわたるため,科学的研究の成果の確定を待つことは,今現在検診を受けるべき世代が最新の医療技術による恩恵を受けられない懸念が生じる。令和になって早期発見,早期治療そのものを利益と考え,また低侵襲の治療や異常なしと判定された場合の安心感も利益に含める方向に有効性の概念が広がってきている。40代の乳がん検診において超音波検査を追加することの有効性に関してはJ―START でのデータが報告されており,早期発見などの利益が明らかとなってきた一方で,偽陽性が増加するという不利益に対する配慮も不可欠である。適切な精度管理と,総合判定などの適切な運用によって超音波検査追加の利益を最大化する努力を継続し,広い意味で現役の世代が検診技術の進歩による利益を受けられるように社会システム全体を改善していくことが重要である。
  • 東野 英利子
    2023 年 32 巻 1 号 p. 35-38
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/03
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    茨城県では平成13年(2001年)度から30歳以上に対する超音波検査を併用した乳がん検診を開始した。開始にあたっては登録基準を作成し,講習会を開催した。現在は40歳以上に対するマンモグラフィ検診と組み合わせて2年に1回の超音波検査を行ってもよいことになっている。超音波検診は参入が比較的容易であるがまだ死亡率減少効果が証明されていない,所見が多いなどの問題点がある。 乳がん超音波検診では実施者,実施方法,結果の解析等の精度管理が非常に重要で,開始前にしっかりと決めておくことをお勧めしたい。
  • 阿部 聡子, 森久保 寛, 吉田 広美, 木下 綾菜, 徳原 純子, 大塚 好美, 黒川 徳子, 渡邉 朋子, 斉藤 シヅ子, 大窪 三紀, ...
    2023 年 32 巻 1 号 p. 39-45
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/03
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    現在の対策型乳がん検診の基本はマンモグラフィである。しかし,マンモグラフィは若年者を中心とした高濃度乳房において病変の感度が不十分であると報告されており,さらには高濃度乳房以外でもマンモグラフィだけでは指摘できない乳がんも存在する。「乳がん検診における超音波検査の有効性を検証するための比較試験(J―START)」がLANCET にも掲載されているが,死亡率低減効果が証明されていないため,現時点では対策型としての超音波検診は推奨されていない。 栃木県は,早くから超音波検診を導入していたこともあり,現在はマンモグラフィ超音波併用検診が基本となっている。現在に至るまでの乳がん検診の検査方法の変遷,超音波検査の精度管理,マンモグラフィと超音波検査の関係性,最近導入した分離併用総合判定の成績などを報告する。 マンモグラフィと超音波検査の併用検診は,それぞれの精度管理をしっかり行うことでがん発見率を保ちながら要精検率を絞り込むことは可能である。同時併用総合判定であれば,ほぼ外来診療と同じような感覚で判断できるが,分離併用総合判定の場合は,より慎重に判定することが望まれる。また,総合判定になっても,それぞれの検査方法の精度管理を適切に行うことは必須である。
  • 宇佐美 伸, 大貫 幸二, 狩野 敦, 村上 晶彦, 武内 健一, 阿部 正, 多田 隆士
    2023 年 32 巻 1 号 p. 47-52
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/03
    ジャーナル 認証あり
    岩手県では,2011年よりマンモグラフィ(MG)・超音波(US)併用検診を導入した。その概要と結果を報告する。MG・US 併用検診で懸念されている要精検率の上昇(特異度の低下)による検診の不利益を最小化するため,出張検診においては容易でないとされている同時併用方式を採用し,判定は総合判定とすることとした。MG 読影は,読影医を対象とした症例検討会を定期的に開催すること,比較読影・第三読影のシステムを導入することで経年的に要精検率は低下し陽性反応適中度が上昇した。US は,検診時の全走査動画をDVD に記録しておくことで個々の検者の検査を後日,主観的・客観的に評価することができ極めて有用であった。総合判定の場には可能な限り技師も同席して,総合判定医が求める検査を知り,自分が実施した検査のフィードバックを行う機会とした。 検診成績は,2011年~2021年の11年間に岩手県対がん協会と岩手県予防医学協会にて実施された受診者数のべ30,467名のうち要精検者は892名で要精検率は2.9%,がん発見率0.31%,陽性反応適中度10.4%であった。特に医師不足の地域においては,精密検査機関への負担軽減も重要な課題である。 精度の高いMG・US 検診はインターベンションを除いた精密検査の多くを検診で担うことが可能であり,不要な精検を極力減らすことの利点は大きいと考えられた。
第32回学術総会/パネルディスカッション2 乳房構成判定法の検討
  • 森 美央, 藤岡 友之, 久保田 一徳, 立石 宇貴秀
    2023 年 32 巻 1 号 p. 53-56
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/03
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    高濃度乳房には,乳がんの検出率が低下するマスキング効果と,乳がん発症リスク自体が高いという2つの問題がある。これらの問題を症例ごとに把握するために,デジタルマンモグラフィにおける乳房の構成や濃度を自動解析するソフトウェアの開発が進められてきた。これらのソフトウェアは,乳腺実質の濃度を定量評価として測定し,任意のカットオフ値を設定することで定性評価も行っている。『乳がん診療ガイドライン2022年版』(以下,ガイドライン)のフューチャーリサーチクエスチョン(以下 FRQ)【1】「マンモグラフィの乳房構成の判定に自動測定ソフトを用いることは有用か?」では,自動解析ソフトの乳房の構成における視覚評価との一致性,乳がん発症リスクの予測に関する論文についてシステマティック・レビューが行われた。視覚評価との一致性については,Kappa 係数を報告した16文献は比較的良好な一致率を示したが,日本人女性を対象とした研究は2本と少なかった。高濃度乳房に伴う乳がん発症リスクの増加について,濃度判定を ACR BI―RADS の分類,商用ソフトで検討した論文は5本あり,BI―RADS 分類と同等もしくはそれ以上のリスク予測が可能と結論されている。ただし,こちらも日本人においても有効かどうかはエビデンスが少ない。商用ソフトを日本において使用するにはさらなる検証が必要である。
  • 吉岡 未来, 大迫 俊一, 南 紫織, 宝満 美咲, 下堂薗 絢香, 古川 葵, 屋野 菜々花, 永田 瑠那, 下久保 美佑, 米田 愛里紗 ...
    2023 年 32 巻 1 号 p. 57-61
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/03
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    マンモグラフィにおける乳房構成は,判定にばらつきがあることが問題とされている。そこでばらつきの低減を目的に,新たな乳房構成の評価方法(以下,新法)が提示された。本研究の目的は,新法に基づき乳房構成を評価し観察者間での一致度が従来法と比べて高くなるか検討を行った。 はじめに,新法を ImageJ で評価し従来法と観察者間の一致度を Fleiss’s Kappa の κ 係数を用いて検討した。ImageJ を用いた新法 κ=0.811は,従来法 κ=0.505に比べて高い一致度を示した。ImageJ評価の乖離症例は乳房構成判定の境界付近が多く,乳房厚を考慮して判定をする。また大胸筋に濃度差や乳腺・血管が重なっている場合は ROI の場所に留意する必要がある。次に,新法を技師3名の目視評価に ImgaeJ 評価を加えて検討した結果,一致度は κ=0.685と低い値となった。一致度が低く なった理由として,大胸筋濃度はポジショニングの影響を受けるため注意が必要である。これらの結果から特徴を踏まえて若手技師にレクチャーを行い新法による目視評価を行った。これらをレクチャー時に加えることで,若手技師の新法による目視評価はレクチャー前 κ=0.629に対しレクチャー後は κ=0.728と改善した。 新法は従来法と比較して ImageJ 評価,目視評価ともに観察者間で高い一致度を示した。しかし一致度を上げるためには,適切にポジショニングされたマンモグラフィの画像であることや,新法のレクチャーなどをして認識を統一させることが重要である。
  • 林 早織, 久保 真, 森 寿治, 中村 雅史
    2023 年 32 巻 1 号 p. 63-65
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/03
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    マンモグラフィ検診の有効性に影響を与える一因として高濃度乳房が知られており,本邦でも2016年より議論が盛んに行われるようになった。高濃度乳房の問題は,乳癌の検出率が低下するマスキングリスクと,乳癌の発症が高くなることである。そのため,客観性・再現性を担保した乳房構成の評価は重要である。しかしながら,目視による判定では読影者内・読影者間で乳房構成の評価にばらつきが生じることが報告されている。そこで,画像化処理される前の RAW データから3次元的解析する Volpara 社の乳房構成自動解析ソフト(Volpara Density)を用いて,客観的に乳房構成の評価を行う研究を計画した。 【対象と方法】2021年2月より2022年9月に共同研究施設で施行されたマンモグラフィ23,447回分を対象とした。被検者は延べ8,350人であった。すべて女性で,年齢中央値は49歳であった。各 RAWデータから乳腺濃度(VBD)は数値化(%)され,a;3.5%未満=脂肪性,b;3.5~7.5%未満=乳腺散在,c;7.5~15.5%未満=不均一高濃度,d;15.5%以上=極めて高濃度に評価される。 【結果】VBD の平均は加齢とともに減少することが示された。また,Grade d(極めて高濃度)の割合も,年齢が上がるとともに減少した。 【まとめ】年齢の上昇によって VBD は低下していくことが客観的に明確となり,日本人における乳房構成の基礎データ(年齢別 VBD と Grade d 率)を得ることができた。Volpara Density は世界中で広く普及している診断ツールであり,大規模な研究を本邦においても導入を急ぐべきと考える。
全国集計報告――2019年度
原著
  • 荒尾 圭子, 石井 里枝, 石井 美枝, 眞田 泰三, 吉田 彰
    2023 年 32 巻 1 号 p. 77-83
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/03
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    AEA(International Atomic Energy Agency)から刊行されたガイドラインには,他のガイドラインでは設定されていない各装置のファントム厚ごとの signal difference to noise ratio(SDNR)の許容値・目標値が設定されている。SDNR と MGD(mean glandular dose)の許容値・目標値について,間接 FPD(flat panel detector)および直接 FPD マンモグラフィ装置,CR(computed radiography)マンモグラフィ装置を使用し検討を行った。 各装置,各 PMMA ファントム厚で MGD の増加に伴い SDNR は増加した。ファントム厚20mm では,全ての装置において許容値以下の MGD で SDNR の許容値を超えた。ファントム厚45mm,70mm では,MGD を増加させても SDNR の許容値を超えない装置もあった。 許容値以下の MGD で SDNR の許容値を超えない場合は,臨床使用を避け管電圧やターゲット/フィルタの設定を調整する必要がある。許容値・目標値が示されることにより,ディジタルマンモグラフィ装置の設定を調整する判断が可能であると考える。
  • 篠原 範充, 西垣 智鈴
    2023 年 32 巻 1 号 p. 85-89
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/03
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    乳がん検診に用いられるマンモグラフィ装置は,日本医学放射線学会の定める使用基準を満たしていることが要求されている。すでにマンモグラフィは,全面的にデジタルシステムへと移行していると考えられ,ソフトコピー診断が主流となっている。しかし,我が国においてシステムの変遷を調査した論文は報告されていない。そこで,本研究では,2009年から2019年の導入件数について集計し,マンモグラフィの検出器のシステムの変遷について調査した。集計データは,月刊新医療に掲載している2009年から2019年の11年分の「マンモグラフィ設置施設名簿」を用いた。基本的に年々導入数は増加傾向にあり,アナログシステムは年々減少傾向,デジタルは年々増加傾向であった。2019年には,アナログシステム53.2%,デジタルシステム46.8%となったが,一部メーカーの FPD の導入数が集計データに無いため,デジタルシステムが同程度または,導入数が上回っている可能性が推察される。しかし,本データからは正確に把握することはできなかった。本研究は,参考文献を参考に実施したものであり,メーカー設置台数や都道府県別の台数においても実際と異なることも考えられる。しかし,2009年から2019年のシステム変遷について傾向を把握する資料としては有効であったと考える。
  • 篠原 範充, 佐治 優香, 小原 拓也
    2023 年 32 巻 1 号 p. 91-96
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/03
    ジャーナル 認証あり
    マンモグラフィは,ソフトコピーによる診断が主流となっている。近年,高解像度モノクロモニタだけでなく,高解像度カラーモニタが登場し,マルチモダリティでの読影が可能となった。同時に民生用としても高解像度化が進み4K タブレットなどが普及しつつある。そこで,本研究では,医療用カラーモニタと4K タブレットの物理特性を比較した。使用機器は,5MP カラーモニタは CCL550i2/AR,12MP カラーモニタは Coronis UnitiMDMC―12133,4K タブレットは UT―MA4を使用した。また測定にはエスエス技研社製NS―2007,カメラは Nikon 社製 D80を用いた。測定値は,均一性,MTF,NPS である。均一性は,5MP,12MP カラーモニタは同程度であったが,4K タブレットは劣る結果となった。MTF は5MP,12MP カラーモニタ,4K タブレットともに良好な結果であったが,水平-垂直の安定性は4K タブレットの方が劣っていた。NPS についても,4Kタブレットは,5MP,12MP カラーモニタよりも劣る結果となった。これはピクセルサイズとサブピクセル構造が要因であると考えられる。これらの結果より,本研究で用いた4K タブレットは,読影端末としては用いることは最適ではない。しかし,4K タブレットは医療用モニタを超える高解像度と高い鮮鋭性を有し,GSDF 表示が可能であるため,汎用モニタと比較してマンモグラフィ読影の学習用や研修などへの利用が期待される。ただし,4K タブレットの物理特性は医療用モニタよりも劣るため,5MP で行った診断結果が,4K タブレットで充分に描写できることを確認する必要がある。
  • 福永 真理, 田中 夏樹, 山口 倫, 上尾 裕昭
    2023 年 32 巻 1 号 p. 97-103
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/03
    ジャーナル 認証あり
    大野城市対策型乳がん検診は集団検診のみであったが,2020年度より葉書による個別通知と近隣医療機関での個別検診という新システムが導入されたので,初年度における当院の検診受診者を対象にその有効性と課題を検討した。 当院における市個別検診受診者を対象とし,受診者数の変化・受診者詳細・検診プロセス指標・発見乳癌・検診から手術施設紹介までの期間を調査した。また,乳がん検診に関する意識調査目的で2021年度検診受診者を対象にアンケートを実施した。 2020年度の40歳無料クーポンを除く市検診全体の受診者は2,191名と前年度の1,656名より大幅に増加した。当院の受診者は398名(全体の18.2%)で,適切な検診間隔の受診者は約半数,自己触診率は38.4%と検診への関心度は低かった。発見乳癌は3名(0.75%)で2名が早期癌であった。要精検率は12.3%,精検受診率95.5%,陽性反応的中度6.8%であった。当院個別検診後に精査受診した乳癌症例における手術施設紹介までの日数は平均31日と,他施設検診後に受診した乳癌症例の平均71.4日と比較し短期間であった。アンケートの受診契機では,9割の受診者が個別通知を選択していた。 市乳がん検診の新システム導入により,検診受診者は大幅に増加した。個別検診施設として初参加した当院では要精検率の高さが課題となったが,乳腺専門外来における個別検診の利点も示された。
  • 浜田 未佳, 苅田 真子, 相川 隆夫, 和田 公子
    2023 年 32 巻 1 号 p. 105-110
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/03
    ジャーナル 認証あり
    ブレスト・アウェアネスは乳房を意識した生活習慣を身につける乳房の健康教育であり,進行乳癌の減少をもたらすとされている。今回,当センターからの紹介症例からブレスト・アウェアネスの意義を検証する目的で,死亡率のサロゲートとして早期癌割合を用い,ブレスト・アウェアネスの効果を検討した。当センターで精密検査を施行し,乳癌あるいは乳癌疑いで治療施設に紹介した190例を対象とし,視触診所見,自覚症状の有無で発見動機別のグループ分けをした。さらに,ブレスト・アウェアネスの項目として,「乳房を意識した生活習慣(乳房チェック)」と「検診」の有無で4群に分類し,各群での早期癌の割合を比較した。結果,190例全体の早期癌割合は,検診のみ群と両方していた群では差はなく,両方なし群と検診のみ群では,検診のみ群のほうが有意に高かった。また,乳房チェック率と検診受診率の関係をみると,乳房チェックのある群では有意に検診受診率が高い結果であった。ブレスト・アウェアネスの検診は早期癌発見に寄与するが,乳房チェックによる上乗せ効果は小さく,乳房チェック自体は早期癌発見にあまり影響しないが,乳房チェックと検診受診には関連性があり,特に検診を受ける動機付けには乳房に関心を持つことが重要と思われる。
症例報告
  • 油木 純一, 梅田 朋子, 澤田 佳奈
    2023 年 32 巻 1 号 p. 111-116
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/03
    ジャーナル 認証あり
    腫瘍径5mm 以下の T1a 乳癌は微小病変として扱われている。一般的にリンパ節転移は稀で,5年生存率は95%以上と予後は比較的良好であり化学療法を行わないことが多い。ところが,組織型や性質によっては急な経過を伴うこともあり,T1a 乳癌においても早期発見は重要である。そこで,当院で治療した T1a 乳癌を検討することとした。 2015年4月~2022年3月の期間に当院で手術を施行した T1a 乳癌症例を後方視的に検討した。全6症例であり,平均年齢65.8±11.3歳,全て女性であった。発見の契機は検診4例,腫瘤触知2例であった。検診で見つかった4例はすべて MMG であり,所見は石灰化が3例,構築の乱れが1例であった。Subtype は Luminal A:2例,Luminal B:2例,HER2:1例,TN:1例であった。組織型は,IDC:5例,IMPC:1例であった。 当院で治療した T1a 乳癌の67%が検診を契機に治療しており,早期発見,早期治療が可能であったといえる。また,HER2強陽性や TN,IMPC といった比較的悪性度の高い乳癌も含まれている。T1a 乳癌に対して化学療法は行われないことが多く,検診で5mm 以下の状態で乳癌を発見することは乳癌の治癒率を向上させるだけでなく社会経済的にも意義がある。
  • 藤田 由佳
    2023 年 32 巻 1 号 p. 117-120
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/03
    ジャーナル 認証あり
    57歳女性。5年ほど前にヒアルロン酸注入による豊胸術を受けた。ヒアルロン酸注入によりバストアップし5年経過した現在も縮小なく,目立ったトラブルを感じていない。今まで不定期にマンモグラフィや超音波検査での乳がん検診を受診しており,今回対策型乳がん検診超音波検査で異常を指摘され当院を受診した。当院初診時の視触診にて両側乳房下部全体におよぶ大きな腫瘤を触知した。乳房超音波検査にて両側乳房下部に嚢胞性腫瘤を認めた。 今回,ヒアルロン酸注入による豊胸術を受けた後,注入物が吸収されず巨大腫瘤を形成した症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。
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