日本乳癌検診学会誌
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長野県がん検診センターを受診した乳癌集検要精検例の検討
触診および超音波診断の評価と自己検診法の普及度からみて
小池 綏男寺井 直樹若林 透
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1995 年 4 巻 2 号 p. 171-177

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抄録

長野県では, 視・触診に超音波検査を併用した検診と自己検診法の教育を2不柱とした乳癌集検を昭和55年度から開始した。集検開始後は毎年, 県下の4地区で超音波画像読影研修会を開催して検診医の診断能の向上に努めてきた。一方, 長野県がん検診センターは癌の精検施設として昭和58年10月に開所した。
今回は過去10年3ヵ月間に本センターの乳腺外来を訪れた乳癌集検要精検1,441例を前期・後期の2群に分けて, 検診医の視・触診と超音波診断の診断能を比較し, さらに, 著者の診断能と対比した。また, 受診者に対する乳房自己検診法の普及程度についても調査し, 以下の結果を得た。
1) 前期の受診者655例中では乳癌は30例, 4.6%であり, 後期786例中では31例, 3.9%であった。
2) 検診医の視・触診および超音波診断の診断能は, 後期は前期と比べて著しく高かった。
3) 著者の視・触診と超音波診断の診断能は前期と後期の間に著しい差はみられなかった。
4) 検診医の視・触診と超音波診断の診断能の向上がみられたことから乳癌集検の波及効果の一端がうかがわれた。
5) 集検受診者が乳房自己検診法を理解している割合は受診回数が増すにつれて増加していたが, 実行している割合は60%程度で, 横ばい状況であった。
6) 乳房自己検診法の教育は集検を受診しない人にも広く普及させる対策が必要である。

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