本稿は,簿記初学者の実態について,授業データを用いて検証するものである。筆者が2013年度から2016年度に担当した初学者を対象とする簿記の授業を通して収集した大学1年生156名のデータをもとに,学力指標と学修達成度の関連を分析し,特定の学力が簿記の学修達成度に影響を与えているかを明らかにすることが目的である。記述統計では,学力指標の高い学生の学修達成度が高い傾向にあった。分析の結果,学修達成度に影響を与える学力指標として,GPAが強く影響を及ぼしていることが確認され,授業に限定すれば,数学との関連が確認された。また,出身高校偏差値と学修達成度の間に関連は確認できなかった。インプリケーションとして,学修に入る段階での基礎学力が不足している学生へのケアの必要性,学修への動機付けの重要性に言及した。