抄録
IFRS15公表前の収益認識時における本人か代理人かの論点は,単純な財・サービスを顧客に移転する取引を想定し,その取引価格を総額(グロス)で認識するか,純額(ネット)で認識するかということであった。今日の財・サービスを顧客に移転する取引は複雑化しており,IFRS15では,顧客との約束の中で複数要素契約も想定した収益認識基準となった。複数要素契約では,別個の履行義務であると判断した場合には,それぞれ個別に履行義務を識別することになる。さらに,取引に他の当事者が関与している場合には,その特定された履行義務は,「支配」の観点から本人と判断される場合もあれば,代理人として判断される場合もある。本稿は,売上時に他の当事者が関与するいくつかのケースについて,IFRS15の本人か代理人なのかという判断を参考に,日常の取引記録における仕訳や勘定科目について考察したものである。