本稿の目的は,「統一基準」における純資産変動計算書を区分する新設された中間計算項目である「本年度差額」の意義を検討することにある。資源の性質に照らして検討した結果,行政コスト計算書における「収益」と純資産変動計算書における「財源」は取引に資金的な裏付けがある点に同質性を有していると考えられた。一方,「財源」と「その他の純資産変動原因」は,資金的な裏付けがある取引か否かという点で異質性があると考えられた。したがって,純資産変動計算書を区分する中間計算項目である「本年度差額」の意義とは,その算定を通じて,地方公共団体が外部との取引を通じた広い意味でのキャッシュの獲得によって,一会計期間の行政コストが十分に賄えているか否かを示すよう求めた点にある。