本研究では,江州中井家相馬店の決算報告書である店卸目録を検討し,仙台質店及び石巻店の事例とあわせて計算・報告形式の変化を明らかにし,形式の統一化の観点から考察を行った。具体的には,仙台質店は寛政9(1797)年~享和4(1804)年,石巻店は享和元(1801)年~天保11(1840)年,相馬店は寛政3(1791)年~文化7(1810)年の店卸目録を時系列で比較し,その変化を追った。分析の結果,開店当初は各店独自の計算・報告形式をとっている場合であっても,後に仙台質店の形式に統一されることから,中井家の一部店舗においては,営業形態や制度の差による部分を含みながらも,業種ごと,あるいは店舗群における統一性を意識した報告書を作成していたことを示した。