企業結合に関する会計基準の国際的なコンバージェンスによって,日本基準とIFRS(および米国基準)との規定上の差異は解消されつつある。しかし,かかる作業が日本基準の思考に及ぼしている影響は大きい。本稿では,日本基準とIFRSを対比する形で,支配(control)や重要な影響力(significant influence)の段階的な獲得や喪失(以下,支配等の段階的な得喪)における持分投資の測定に関する規定を整理することを通じて,日本基準とIFRSとの規定上の差異を明らかにしつつ,日本基準が抱える課題について検討している。その結果,日本基準における支配等の段階的な得喪の取扱いをめぐっては,会計処理の根拠が十分に整理されていない状態にあり,それが内部的な不整合の一因となっている点を指摘した。コンバージェンスが日本基準にひずみをもたらした可能性もあるといえ,規定上の差異の解消を図るだけでなく,基本的な考え方を十分に整理した上で,作業を進める視点が必要であろう。