本論文の目的は,簿記・会計研究者 7 名の見解を手掛かりにして,簿記(学)と会計学の関連性について諸説を整理することにある。教育上の関係性については,簿記の固有性を認めるべきとする独立説と,簿記と会計は表裏一体であるとする一体説とに分けられるが,一体説,すなわち期中取引の記録や管理のみならず,決算整理や(連結)財務諸表の作成も含めて,簿記(・会計)という科目で教育すべきとする見解が多数であった。一方,研究上の関係性については,独立説はみられるものの,一体説はみられなかった。独立説が支配的なのは,簿記研究のアイデンティティを消滅させないためであった。しかし,簿記研究の主たる対象は記帳手続きの普遍的かつ体系的な説明であるが,簿記研究に拡がりがみられないことが懸念されていた。本論文の考察を通じて,簿記(学)の発展可能性は,その深化だけでなく,その周辺にある学問にどれだけ働きかけられるのかにかかっていることを指摘する。