簿記研究
Online ISSN : 2434-1193
持分移動の記録
子会社株式の一部売却取引を題材として
木村 太一
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2022 年 5 巻 1 号 p. 17-29

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抄録

本稿では,子会社株式の一部売却取引(支配喪失を伴わない子会社株式の売却取引)の会計処理を取り上げる。当該会計処理に関する議論ではこれまで,当該取引に伴って何らかの差額が記帳されることを前提に,その差額についてこれをどのように会計処理するかが議論の焦点になってきた。そこで本稿では,自明視されてきた「差額が生じる」という前提を取り払うことにより,これまで論じられてこなかった,差額を記帳しない会計処理(の可能性)を検討する。これにより,これまで論じられてきた会計処理を相対化し,そこに暗黙裡に存在している特質,すなわち持分移動の記録が非対称的に行われるという特質を解明する。最後に,こうした非対称性が存在することを受けて,現行実践上の会計処理においては,非支配株主持分勘定を資本として取り扱いながらも,持分移動の記録を非対称にすることによって,非支配株主と親会社株主との間で会計上の取り扱いに差が設けられていることを指摘する。

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2022 日本簿記学会
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