抄録
MOSFETへの適用でのキャリア移動度を向上が期待できるひずみシリコンチャンネル層を,接合容量の低下による高性能化と同時に実現する構造として,ひずみSi-on-Insulator(ひずみSOI)構造が注目されている.この構造を用いて作成するひずみSOI素子の性能を充分に引き出すためには,Ge濃度が高く,かつ厚さが充分に薄いSiGe on Insulator基板(埋め込み酸化膜上に格子緩和したSiGe層を接合した基板)を用意する必要がある.これらの要求を満たすためのSiGe on Insulator基板作成技術として,SIMOX法の応用に始まり,埋め込み酸化膜上のSiGe層を熱酸化により薄層・高Ge濃度化する酸化濃縮法が開発され,良質で超高性能のひずみSOI-MOSFETの要求に対応できる技術となりつつある.本稿では,主として酸化濃縮法を用いたSiGe on Insulator構造の作成技術を紹介するとともに,酸化濃縮時において重要な役割を果たすと考えられる転位の導入とひずみの緩和の機構の関連に関しても議論する.