バルク状態,薄膜状態におけるIV族混晶半導体Si_<1-x-y>Ge_xC_yの熱力学的安定性について,経験的原子間ポテンシャルを用いた過剰エネルギー計算とモンテカルロシミュレーションによる系統的な検討を行う.バルク状態においては,Si_<1-x-y>Ge_xC_y混晶半導体の過剰エネルギーは全濃度領域にわたって正の値をもつ.この結果は,Si_<1-x-y>Ge_xC_y混晶半導体は温度0Kにおいて熱力学的に不安定であることを意味している.さらにC濃度yを一定としてGe濃度xを増加させると,Si_<1-x-y>Ge_xC_y混晶半導体の過剰エネルギーは増加して行く.これは,Ge濃度の増加に伴いSi_<1-x-y>Ge_xC_y混晶半導体中のひずみエネルギーが増加することに起因している.また薄膜状態においては,基板/薄膜界面での格子拘束の影響により,過剰エネルギーはバルク状態の値に比べ20-30%程度減少する.ただし上記のGe濃度と過剰エネルギーの関係のような定性的傾向については,バルク状態と同様である.これらに加えてモンテカルロシミュレーションにより,Si_<1-x-y>Ge_xC_y混晶半導体の熱力学的安定性への表面の影響を検討する.表面の存在は,Ge原子の最表面層への偏析,C原子の第2層への集中的な分布を誘起する.以上の計算結果は,基板/薄膜界面における格子拘束はSi_<1-x-y>Ge_xC_y混晶半導体を熱力学的に安定させる傾向にあること,一方,表面の存在はGe原子とC原子の表面近傍への偏析をもたらし,均一なSi_<1-x-y>Ge_xC_y混晶半導体の形成を阻害する傾向にあることを示唆するものである.
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