抄録
〔要旨〕【はじめに】緊急/準緊急手術術前に深部静脈血栓症(deep venous thrombosis;DVT)および肺血栓塞栓症(pulmonary embolism;PE)が発見された場合の治療戦略について報告する。【対象と方法】2016年5月~2021年5月に,聖路加国際病院にて緊急あるいは準緊急手術が施行された症例のうち,術前に新規のDVT/PEを認めた4症例を後方視的に検討した。【結果】年齢は60~80代。原疾患は大腸癌による腸閉塞2例,盲腸癌による虫垂炎1例,肝囊胞自然破裂1例。診断契機は術前CT検査にて偶然にDVT/PEを発見された症例が3例,下腿腫脹を契機にエコー検査で診断された症例が1例。緊急手術となった肝囊胞自然破裂症例以外の3例で診断時から手術4時間前まで全身ヘパリン化が施行され,1例で術前に下大静脈フィルターが挿入された。術後入院期間中にPEの新規発症は認めなかった。【結語】緊急/準緊急手術を要する症例で術前に新規DVT/PEが発見された場合,最小限の待機期間内に血栓の安定化を図ることで安全に手術を施行することが可能であった。