Japanese Journal of Acute Care Surgery
Online ISSN : 2436-102X
早期公開論文
早期公開論文の15件中1~15を表示しています
  • ―外科を中心としたAcute Care Surgeon育成プログラム―
    松本 尚也, 宮永 洋人, 柿木 啓太郎, 酒井 哲也, 坂平 英樹
    論文ID: 25-016
    発行日: 2025/10/06
    [早期公開] 公開日: 2025/10/07
    ジャーナル フリー 早期公開

    〔要旨〕2013年に日本Acute Care Surgery(以下,ACS)学会が発足し,外傷外科,救急外科,外科的集中治療を扱う外科の一分野として確立され,Acute Care Surgeon(以下,AC Surgeon)は外科医であるということが明確となった。また,2019年より外科専門医が取得できる資格としてACS認定外科医制度がスタートした。AC Surgeonは外科医であることから,最低でも外科の修練を終了後に外科専門医を取得することが必須である。また,外傷診療や集中治療の修練も必要である。その後については,手術件数を求めるのであればAC Surgeonは日常的に手術に参加できる外科所属が好ましいが,重症外傷に対して初期診療から対応するためには救命救急センター所属が好ましい。兵庫県外傷救急外科グループでは,AC Surgeon育成とその後のキャリアを明確にするため,プログラムを作成し運用している。

  • 内田 健一郎, 日村 帆志, 芳竹 宏幸, 佐尾山 裕生, 西村 哲郎, 溝端 康光
    論文ID: 25-008
    発行日: 2025/10/06
    [早期公開] 公開日: 2025/10/07
    ジャーナル フリー 早期公開

    〔要旨〕外傷性膵損傷に対する当施設の系統化した治療戦略と成績を後方視的に検証した。対象となった20例のうち,血行動態不安定で開腹術中に体尾部損傷を4例で認め体尾部切除を施行した。血行動態安定でCT検査により膵損傷が疑われた16例のうち3例で主膵管評価前に腹膜刺激兆候を認め緊急開腹を施行した。1例が体尾部切除,2例が頭部損傷で開腹+閉鎖式吸引ドレナージ(closed suction drainage;CSD)管理中に内視鏡的逆行性胆管膵管造影(endoscopic retrograde cholangiopancreatography;ERCP)を施行,うち1例に内視鏡的ドレナージ(endoscopic drainage;ED)を追加した。ERCPを先行できた11例のうち9例がEDのみ,2例が膵体尾部切除+CSD留置,うち1例にEDを追加した。ED, CSD留置期間は各々18(9~24)日, 14(6~32)日,在院日数は25(9~33)日であった。3例で仮性膵囊胞の遅延形成を認めたが,膵損傷関連死亡は認めず妥当な戦略・戦術が実施できていた。

  • 米嶋 美晴, 上澤 弘美, 阿久津 智洋, 鈴木 啓介, 遠藤 彰
    原稿種別: その他
    論文ID: 25-009
    発行日: 2025/10/06
    [早期公開] 公開日: 2025/10/07
    ジャーナル フリー 早期公開

    〔要旨〕ERで実施する緊急手術では迅速な準備が必要である。本活動の目的はER手術室における緊急手術の準備に関する看護師教育において客観的評価を可能とする評価表を導入し,課題を明確にすることであった。対象はER看護師16名とし,10項目43小項目の評価表を用いて手術準備のシミュレーションを実施した。評価の結果,記録と応援要請に関しては比較的高得点であったが,手術器械準備,麻酔カート管理,吸引・輸血準備,環境調整,麻酔器管理において課題が認められた。とくに麻酔器の操作手順やゾーニングの不備,使用頻度の低い手術器械の準備不足が顕著であり,緊急手術の際に用いるアクションカードや物品管理体制に課題があることが示唆された。アクションカードの改訂,物品管理体制の強化,麻酔機器操作に関する教育の充実,ならびに定期的なシミュレーション教育の継続が必要であると考えられた。

  • 松居 亮平, 秋山 真之, 山岸 庸太, 平川 昭彦, 服部 友紀, 瀧口 修司
    原稿種別: その他
    論文ID: 25-015
    発行日: 2025/10/06
    [早期公開] 公開日: 2025/10/07
    ジャーナル フリー 早期公開

    〔要旨〕Acute Care Surgery(ACS)は魅力ある分野であるが,外科医としてスキルの維持に必要な症例数の確保や院内での立ち位置など,解決すべき課題も多い。名古屋市立大学病院(以下,当院)ではACSを消化器外科の一部門として位置づけ,Acute Care Surgeonと消化器外科医が連携するハイブリッド型の診療体制を構築した。この体制により,外科医の待遇改善や持続可能な勤務体制の確立,手術の質と症例数の確保が可能となった。また,若手医師の育成やリクルートにも貢献している。本稿では,当院におけるこの新たな取り組みと,その利点について報告する。

  • 鳥居 剛, 山東 雅紀, 加藤 祐一郎, 山口 直哉, 水谷 文俊, 萩原 康友, 小川 健一朗, 川合 毅, 村上 倫彦, 水谷 真也, ...
    論文ID: 15-8
    発行日: 2025/09/16
    [早期公開] 公開日: 2025/09/16
    ジャーナル フリー 早期公開

     症例は70歳代,男性。突然の腹痛を主訴に名古屋掖済会病院を受診し,経過観察となったが,翌日に頻回の嘔吐が出現し再受診した。腹部造影CT検査にて,正中弓状靱帯症候群(median arcuate ligament syndrome;MALS),およびMALSに伴う膵十二指腸動脈アーケードの破綻による後腹膜血腫と診断した。循環動態は安定していたが,血腫による十二指腸の圧排と,十二指腸壁の浮腫が生じたことにより十二指腸閉塞をきたしていた。経鼻胃管による減圧を行い,保存的治療を開始したが,十二指腸閉塞は改善しなかったため,第29病日に腹腔鏡下胃空腸バイパス術を施行し,良好な経過が得られた。

  • 山本 奈緒, 松本 正成, 大川 宗秀, 山下 諒, 佐粧 槻, 成田 正雄, 湯本 啓太, 矢野 清崇, 草塩 公彦
    論文ID: 15-10
    発行日: 2025/09/16
    [早期公開] 公開日: 2025/09/16
    ジャーナル フリー 早期公開

    パーキンソン病による誤嚥性肺炎を繰り返す70歳代男性に対して,内科でintroducer原法による経皮内視鏡的胃瘻造設術が施行された。術中,シース付き針穿刺後に胃内への出血を認め,千葉ろうさい病院重症・救命科へsurgical rescueの依頼となった。収縮期血圧71mmHgで初期輸液療法に反応がなく,蘇生的大動脈内バルーン遮断(resuscitative endovascular balloon occlusion of the aorta;REBOA)施行後に緊急開腹を行った。腹部大動脈前壁右側の腎動脈分岐部に損傷を確認し,縫合止血を行った。術後は集中治療管理を要したが,良好に退院し得た。胃瘻造設術に伴う腹部大動脈損傷の報告は本邦初であり,侵襲的手技のリスクとsurgical rescue体制の重要性を再認識させる1例であった。

  • 奥澤 平明, 阿久津 智洋, 星 博勝, 鈴木 啓介, 遠藤 彰
    原稿種別: 原著
    論文ID: 15-11
    発行日: 2025/09/16
    [早期公開] 公開日: 2025/09/16
    ジャーナル フリー 早期公開

    背景:外傷性膵損傷はまれであり症例の蓄積が難しいなか,主膵管損傷を伴う症例の治療戦略は施設によって異なり一定のコンセンサスがない。総合病院士浦協同病院(以下,当院)での外傷性膵損傷症例を後方視的に検討し治療戦略を提示する。 方法:当院で2004年1月1日~2024年3月31日の期間で外傷性膵損傷をカルテより後ろ向きに集計した。 結果:AAST(The American Association for the Surgery of Trauma)Gradeで評価した。症例は合計13例でGrade Ⅲ以上の症例が5例であった。手術の適応は他の手術適応のある腹腔内他臓器損傷の有無,来院時ショックバイタルの有無で決められていた。一方バイタルサインが安定したGrade Ⅳの膵単独損傷の2症例に対して内視鏡的経鼻膵管ドレナージ(endoscopic naso-pancreatic drainage;ENPD)を用いたnon-operative management(NOM)が施行され良好な転帰をたどっていた。13例中死亡例はなかった。 結論:腹腔内他臓器損傷やショックを有し手術が必要な症例がある一方で,主膵管損傷を伴う症例に対してENPDによるNOMで良好な転帰をたどった症例があった。

  • 上澤 弘美, 米嶋 美晴, 阿久津 智洋, 鈴木 啓介, 遠藤 彰
    原稿種別: その他
    論文ID: 15-7
    発行日: 2025/09/16
    [早期公開] 公開日: 2025/09/16
    ジャーナル フリー 早期公開

     2022年より自施設で導入されたAcute Care Surgery(ACS)体制の運用に向けて,看護師長として多職種連携,他部署との協力体制構築,ER看護師の教育などに取り組んだ。ER手術室チームを結成し,看護部長を含む全師長にACSを周知し,必要物品の購入・整備,コスト管理,massive transfusion protocol(MTP)整備やシミュレーションを実施した。また,ER看護師に対しては救急科医師とのシミュレーションや外傷手術チームシミュレーションの参加を推進した。活動を通じて,ACS体制の確立には医師や多職種との連携が重要であり,協力を得ることでシステムが整備されたと考える。最終的に各自の役割を明確にし,ACS体制を確立することができた。

  • 知野 紗友美, 置塩 裕子, 上田 健太郎, 那須 亨, 川嶋 秀治, 柴田 尚明, 國立 晃成, 井上 茂亮
    原稿種別: 原著
    論文ID: 15-9
    発行日: 2025/09/16
    [早期公開] 公開日: 2025/09/16
    ジャーナル フリー 早期公開

    目的:壊疽性胆囊炎手術施行症例の病態,選択術式,手術時期,予後を検討し,その至適手術時期,術式を検討した。 方法:過去約7年間の和歌山県立医科大学附属病院高度救命救急センター(以下,当センター)で治療された急性胆囊炎手術症例を対象とし,壊疽性群と非壊疽性群に分け,患者背景,手術時期,術式,入院期間,合併症などを検討した。 結果:壊疽性群は84例であった。非壊疽性群32例と比較して術前頻脈・低血圧が有意に多かった。また,壊疽性群の開腹症例,胆囊亜全摘症例,超早期手術群では重症が多く,術後合併症が多かった。 結論:当センターでも壊疽性胆囊炎は非壊疽性症例に比べ,全身状態の悪い症例が多く,術後合併症も多いと考えられた。今回の検討結果から,合併症を考慮した手術施行前の先行治療の必要性,腹腔鏡手術選択の可能性,亜全摘で終了した場合の合併症対策を検討することが壊疽性胆囊炎の手術成績の向上につながると考えられた。

  • ―当院の10年を振り返って見えてきた課題と対策―
    河野 文彰, 田代 耕盛, 池ノ上 実, 宗像 駿, 鈴木 康人, 武野 慎祐, 古川 貢之, 落合 秀信, 七島 篤志
    論文ID: 15-1
    発行日: 2025/04/10
    [早期公開] 公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー 早期公開

    〔要旨〕Acute care surgery(ACS)を実践した10年間を振り返り,地方都市に求められるACSのあり方を検討した。当院は2012年に救命救急センターが稼働し,外科救急の診療体制に大きな変化が求められた。地域レベルでは,既存の救急体制の維持を重視し重傷例や外傷症例を当院に集約するシステムをとった。施設レベルでは,外傷診療を円滑に行うため既存の外科医によるACSチームの結成と積極的外傷診療の介入を行った。また,チーム維持のためにオンコール体制の充実と周術期管理の完全分業化を実践した。個人レベルでは,手術スキルやモチベーション維持のためスペシャリティをもち日常外科業務を行った。また,ACS育成のため若手外科医,研修医の診療介入を後押しできるように努めた。このように地方都市におけるACSのあり方は,既存の救急システムを維持し,既存の外科医が施設に即したシステムをつくることによって成立すると考える。

  • 室屋 大輔, 上原 智仁, 金野 剛, 山吉 隆友, 井上 征雄, 田崎 幸博, 木戸川 秀生, 岡本 好司
    論文ID: 15-2
    発行日: 2025/04/10
    [早期公開] 公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー 早期公開

    〔要旨〕症例は67歳男性。右足の痛みと発熱,転倒後の顔面受傷を主訴に救急搬入された。既往歴は糖尿病と足の熱傷に対して2カ月前に皮膚移植を受けていた。身体所見では右踵の皮膚壊死と下腿におよぶ腫脹を認めた。血液検査では腎機能障害と炎症所見を認め,手術部位感染の診断で入院となったが,創部のグラム染色でグラム陽性レンサ球菌を認め,ショックを呈したため,侵襲性溶連菌感染症を疑いpiperacillin-tazobactamへの変更とnorepinephrineを開始した。のちの血液培養検査ではA群β溶血性レンサ球菌が陽性であった。2日後,CT検査で下腿にガス像を認めたため,壊死性筋膜炎の診断でデブリドマンを施行した。術後呼吸不全により集中治療を要した。術後3日目に人工呼吸器から離脱し,5日目に一般病床に転床した。今回われわれは術後創感染に劇症型溶血性レンサ球菌感染症(streptococcus toxic shock syndrome)を伴った1例を経験したため報告する。

  • ―ICG蛍光造影法を用いた定型化を目指して―
    落合 貴裕, 河野 文彰, 池ノ上 実, 武野 慎祐, 七島 篤志
    論文ID: 15-3
    発行日: 2025/04/10
    [早期公開] 公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー 早期公開

    〔要旨〕非閉塞性腸間膜虚血症(non-occlusive mesenteric ischemia;NOMI)は腸管膜血管主幹部に器質的な閉塞を伴わないにもかかわらず,腸管の血流障害をきたす疾患である。当院では2022年以降,indocyanine green(ICG)蛍光造影法をNOMIの治療戦略に導入した。ICG蛍光造影法は切除断端をより正確に定義し,切除部位を決定する際に有効であると考えている。NOMIの治療戦略にICG蛍光造影法を取り入れて検討を行った報告は少ない。2017年1月~2023年7月に外科的治療を行ったNOMI 8例を対象とした当院の検討では,ICG蛍光造影法を治療戦略に導入以降,短腸症候群の発症はなく,手術時間も短縮傾向にある。これらの戦略を用いた症例を蓄積することで手術成績の向上,NOMIの予後の改善にもつながるようにさらなる検討を重ねていく。

  • 坂口 裕介, 大田 洋平, 布施 雄馬, 北本 真悠, 杉村 直彦, 高田 由佳理, 前田 直紀, 太田 絵美, 諏訪 宏和, 吉田 謙一, ...
    論文ID: 15-4
    発行日: 2025/04/10
    [早期公開] 公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー 早期公開

    〔要旨〕70歳代,男性。腹痛を主訴に来院,腹部造影CT検査で広範な門脈ガス像と小腸に造影不良域を認め緊急手術を施行した。小腸にまだら状の色調不良を認め,非閉塞性腸間膜虚血症(non-occlusive mesenteric ischemia; NOMI)と診断した。Indocyanine green(ICG)蛍光法で血流評価し,色調不良域を切除,吻合をせずにopen abdomen managementとした。再手術で,ICG蛍光法で血流を確認,腸管吻合を行い閉腹した。術後合併症なく第14病日に自宅退院した。NOMIは致死率が高く,門脈ガスを伴う場合は予後不良とされる。計画的な二期的手術とICG蛍光法を用いて至適な腸管切除を行い良好な転機をたどった1例を報告する。

  • 山尾 幸平, 前村 公成, 飯野 聡, 基 俊介, 吉留 しずか, 大久保 啓史, 喜多 芳昭, 柳 政行, 下石 光一郎, 福元 祥浩, ...
    論文ID: 15-5
    発行日: 2025/04/10
    [早期公開] 公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー 早期公開

    〔要旨〕40歳女性,交通事故により受傷し前医へショックバイタルで搬送された。造影CT検査で膵頭部損傷,十二指腸損傷,右腎損傷の診断となり当院救命センターへ転送された。同日膵頭十二指腸切除術および右腎摘出術を行ったところ術中に下大静脈後面損傷が判明した。修復が困難でありガーゼパッキングを行い,手術を終了した。5日後に二期的手術を行ったが止血されておらず,緊急止血目的に下大静脈ステントグラフト内挿術を実施した。効果的な止血を得ることができ,2日後に再建術を行った後に自宅退院した。膵頭部損傷および下大静脈損傷は共に致死的となり得るため,患者の全身状態や損傷の程度に応じた治療方針を決定することが重要である。

  • 恩田 禎子, 室野井 智博, 川口 留以, 藏本 俊輔, 下条 芳秀, 岡 和幸, 木谷 昭彦, 吉田 理佳, 比良 英司, 渡部 広明
    論文ID: 15-6
    発行日: 2025/04/10
    [早期公開] 公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー 早期公開

    〔要旨〕出血性ショックを呈した鈍的左鎖骨下動脈損傷に対して,hybrid emergency room system(HERS)で末梢血管用ステントグラフトを用いて救命した1例を報告する。68歳男性,高所墜落後の出血性ショックで搬送となった。病院到着4分後の造影CT検査にて,左鎖骨骨折と左鎖骨下動脈からの血管外漏出像を確認し,患者移動なく迅速にHERS内で末梢血管用ステントグラフトを留置し止血を得た。鎖骨下動脈損傷はまれでかつ死亡率が高い損傷である。デバイスの普及に伴い血管内治療が増加しているが,重篤な出血性ショックを呈する症例では,CT血管造影法を安全かつ迅速に行うことは容易ではないものも少なくないため,診断と治療ともに安全性と迅速性に大きな課題が指摘されていた。活動性出血を伴う鎖骨下動脈損傷は,HERSが有効と考えられる病態の一つであることが示唆された。

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