〔要旨〕症例は51歳女性。呼吸困難を主訴に救急搬送された。著明なアシドーシスを認め,造影CT検査では上腸間膜静脈から門脈に血栓が存在し,空腸壊死を認めた。全身状態不良および腸管壊死領域確定のためdamage control surgery(DCS)の方針とし,トライツ靱帯から壊死空腸を約120cm切除し,吻合せずopen abdominal managementとした。約15時間後のplanned reoperation(PRO)では壊死の進展はなく,十二指腸小腸吻合を行い閉腹した。しかし,術後8日目に再度腸管壊死を認め緊急手術を要した。その後,縫合不全に対して長期のドレナージ治療を行ったが,第105病日に独歩退院した。原因は特定できず,特発性の上腸間膜静脈血栓症と診断した。腸管虚血を伴う重症内因性疾患に対してDCSは有用であるが,疾患によって適切なPROのタイミングを設定する必要がある。
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