Japanese Journal of Acute Care Surgery
Online ISSN : 2436-102X
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特集1:Acute Care Surgeonが携わるsurgical rescueの実際
  • 山本 博崇, 伊良部 真一郎, 吉岡 義郎, 神戸 勝世, 恩田 禎子, 齋藤 保隆, 光定 健太, 辰巳 諒
    原稿種別: 原 著
    2024 年14 巻 p. 1-6
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/27
    [早期公開] 公開日: 2024/10/31
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕欧米ではsurgical rescueがAcute Care Surgery(以下,ACS)の4本目の柱として定着しているが,本邦ではAcute Care Surgeonによるsurgical rescueのまとまった報告はほとんどない。そこで,2021年1月~2023年4月に当院外科で行った全緊急手術の中からsurgical rescue 93例を抽出し,ACS群15例とnon-ACS群78例に分け,比較した。ACS群では術前ショック症例,出血量,APACHE-IIスコア,予測死亡率が有意に高かったが,術後合併症に有意差はなく,実死亡率ならびに標準化死亡比はnon-ACS群に比べ有意差はないものの良好な傾向がみられた。単施設の後方視的研究ではあるが,本研究の結果によりACSによる介入が重症surgical rescue症例の治療成績を改善する可能性が示唆された。
  • 萩原 正弘, 前島 拓, 宮崎 大, 深堀 晋, 高橋 徹
    原稿種別: その他
    2024 年14 巻 p. 7-12
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/27
    [早期公開] 公開日: 2024/12/23
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕Surgical rescueとは,外科手術や処置による合併症に対する迅速な救済処置と定義され,acute care surgeryの5つ目の専門領域であるが,わが国におけるsurgical rescueの実態は明らかでない。そこで当院のsurgical rescueのうち,2018年1月〜2023年6月に当科で施行した80例について後方視的に調査し,当院での実態を明らかにすることにした。収縮期血圧90mmHg未満の症例は17例で,そのうち10例(58.8%)でdamage control surgery(以下,DCS)が施行されていた。Surgical rescueにおける手術手技は定時の手術で修練が必要な手技とDCSの手技いずれもが必要である。Failure to rescueを減らすには,これらに加えチームワークやコミュニケーションにより合併症を早期認知することが重要であると考える。
特集2:ACSにおける画像診断
  • 神鳥 研二, 成宮 博理, 石井 亘
    原稿種別: 原著
    2024 年14 巻 p. 13-18
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/27
    [早期公開] 公開日: 2024/11/18
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕【背景】Acute care surgeryを要する症例(ACS症例)の転院で,救命可能なACS症例を認知して適切な治療を行うことと,不必要な転院を回避することは検討すべき点である。当院救急科ではacute care surgeon(ACS医師)を転院依頼元病院に派遣し,この課題に取り組んでいる。【目的・方法】派遣内容と効果,課題抽出を目的に,2020年1月〜2023年9月の事例を検討した。【結果】派遣は9例で,3例が転院適応なしと判断され,2例が転院しなかった。転院7例のうち,4例に手術,3例にIVRが行われ,1例が死亡した。転院前情報に懸念がある場合や,ACS適応となり得る患者の診療に依頼元病院が苦慮する場合に派遣され,ACS医師が依頼元病院で治療適応と,転院の必要性を評価した。【結語】ACS医師の派遣により適切な転院判断が期待できる。この派遣は,ACS症例に対する新たなアプローチとなる可能性がある。
  • 澤村 直輝, 佐々木 佑樹, 水流 慎一郎, 倉田 修治, 髙力 俊策
    原稿種別: 症例報告
    2024 年14 巻 p. 19-23
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/27
    [早期公開] 公開日: 2024/10/31
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕外傷性膵損傷において主膵管損傷の有無が治療方針を決定するうえで重要であり,その検索には内視鏡的逆行性膵管造影(ERP)や磁気共鳴胆管膵管撮影法(MRCP)が施行される。近年は主膵管損傷があっても症例によっては内視鏡による非手術療法も治療の選択肢として確立されつつある。われわれはMRCPで同定されなかった膵頭部主膵管損傷を伴う鈍的膵損傷の症例を経験した。MRCP後も画像検査を含めた慎重な経過観察を行うことで,翌日にはERPで主膵管損傷を同定した。損傷部位を超えて内視鏡的に膵管ステントを挿入し,独歩で退院された。CTやMRCPで主膵管損傷が積極的に示唆されない場合でも,常に主膵管損傷を念頭に置いた慎重な経過観察が重要であると考える。
  • 山吉 隆友, 金野 剛, 室屋 大輔, 沖本 隆司, 又吉 信貴, 上原 智仁, 野口 純也, 新山 新, 井上 征雄, 木戸川 秀生, 岡 ...
    2024 年14 巻 p. 24-28
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/27
    [早期公開] 公開日: 2024/12/26
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕【緒言】子宮広間膜裂孔ヘルニアは近年術前診断例も散見される。今回,当院で経験した3例を画像診断を中心に報告する。【症例1】51歳,女性。出産2回。小腸閉鎖ループを認め,嚢状型で牽引により解除し,裂孔を縫合閉鎖した。【症例2】62歳,女性。出産2回。索状構造による絞扼が疑われ,貫通型で左卵管を切離開放した。【症例3】63歳,女性。出産3回。小腸閉鎖ループを認め,嚢状型でヘルニア門を切開して解除したが,壊死を認め部分切除した。【考察】本疾患は子宮広間膜の脆弱化を原因とし,特徴的CT所見を呈する。治療は嵌頓解除,裂孔処理,絞扼腸管の評価と処置である。発生はまれではあるが画像所見の知識は重要であり,これを捉えることにより術前診断,安全確実な治療が可能になると考えられた。
原著
  • 阿久津 智洋, 遠藤 彰, 奥澤 平明, 星 博勝, 鈴木 啓介, 伊東 浩次, 大友 康裕, 森下 幸治
    原稿種別: 原 著
    2024 年14 巻 p. 29-36
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/27
    [早期公開] 公開日: 2024/10/31
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕背景:十二指腸損傷は鈍的外傷の中でも発生頻度が低く,手術や同術期管理の経験を十分に積むことは難しい。外傷性十二指腸損傷について術式と周術期管理を検討した。方法:2002年1月1日より2023年12月31日の期間に当院で外傷性十二指腸損傷に対して手術を実施した症例を後ろ向きに集積した。結果:症例は全8例で,年齢の中央値は46歳,男性が4例(50%),すべて鈍的外傷であった。AAST Gradeは,Ⅲが6例(75%),術式は十二指腸損傷部の単純縫合閉鎖が4例(50%),単純縫合閉鎖と空腸漿膜パッチが2例(25%),肝円索充填術,膵頭十二指腸切除がそれぞれ1例(12.5%)ずつだった。Clavien Dindo Grade3a以上の合併症は3例(37.5%),術後入院日数中央値は60日で,すべての患者が生存退院していた。結論:外傷性十二指腸損傷は単純縫合閉鎖でも対応可能な場合もある。
  • 川口 雄太, 井上 悠介, 三好 敬之, 足立 利幸, 岡田 怜美, 曽山 明彦, 足立 智彦, 小林 和真, 金高 賢悟, 江口 晋
    原稿種別: 原著
    2024 年14 巻 p. 37-44
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/27
    [早期公開] 公開日: 2024/11/18
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕大腸癌緊急手術では救命目的に加えて,がんの根治性にも配慮する必要がある。今回,当科での大腸癌手術症例について検討した。2013〜2022年の大腸癌手術症例856例を対象とし,緊急群39例と待機群817例に群別して後方視的に検討した。緊急群はStage Ⅳが有意に多く,術式はハルトマン手術,人工肛門造設術が有意に多く,D3郭清は有意に少なかった。在院死亡率は緊急群2.6 %で有意に高かった。術後化学療法施行率は緊急群で32.4 %と有意に低く,Stage別の術後化学療法施行率はStageⅢで緊急群が有意に低かった。5年全生存率,5年無再発生存率ともに緊急群が有意に不良で,Stage別でみるとStageⅢで緊急群が有意に不良であり,再発形式は腹膜播種が多かった。大腸癌緊急手術における短期予後は比較的良好だったが,さらに長期予後の改善のためには患者状態を考慮したうえでの適切な術式選択や術後化学療法が有用となる可能性がある。
  • 上原 綾音, 吉本 匡志, 真島 宏聡, 桂 佑貴, 澤田 紘幸, 石田 道拡, 佐藤 太祐, 吉田 龍一, 丁田 泰宏, 吉満 政義, 中 ...
    原稿種別: 原著
    2024 年14 巻 p. 45-49
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/27
    [早期公開] 公開日: 2024/11/18
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕【背景】2024年4月より医師に対する働き方改革が適用された。当院では急性虫垂炎(acute appendicitis以下,AA)に対してoperative management(以下,OM)を原則としてきたが,Non-operative management (以下,NOM)が国際ガイドラインでも提示されている。【新治療方針】2023年4月より,糞石性および汎発性腹膜炎症例を当院におけるOM適応とした。【対象と方法】対象は2019~2022年(前期),2023年度(後期)に当院でAAに対しOM施行された症例。OM件数・施行時間帯・新治療方針の安全性を検証した。【結果】前期OM症例は381件,新治療方針に則ると48.5%がNOM適応であった。OMの75.5%が時間外労働であった。後期OMは58件,深夜帯施行例は前期と比して69.8%減少した。NOM不応によるOM移行は11%であった。【結論】AAに対するNOM導入は,外科医の時間外労働の減少に寄与する可能性がある。
  • 茅田 洋之, 臼井 章浩, 寺川 航基, 橋本 優, 加藤 文崇, 天野 浩司, 向井 信貴, 晋山 直樹, 福田 浩之, 山本 陽子, 池 ...
    原稿種別: 原 著
    2024 年14 巻 p. 50-55
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/27
    [早期公開] 公開日: 2024/10/31
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕近年,高齢者の外傷性肋骨骨折に対する治療戦略として外科的肋骨固定術(surgical stabilization of rib fractures;SSRF)の増加がみられている。2017年4月~2023年8月に当院でSSRFを行った39例を対象として診療録ベースの後ろ向きコホート研究を行い,80歳未満と80歳以上の2群間で患者背景や手術関連項目,術後合併症の頻度,治療成績に差がみられるかを比較検討した。80歳未満は29例,80歳以上は10例であった。80歳以上群は,80歳未満群と比べて有意に胸部単独症例が多く,全身の外傷重症度は低かったが,手術関連項目や術後合併症の頻度,治療成績に両群で差はみられなかった。筆者の施設症例と適応下においては,高齢者SSRF症例であっても術後合併症が増加することはなく,より重症度が高い若年症例と同程度の術後転帰が得られていた。
  • 長尾 剛至
    原稿種別: その他
    2024 年14 巻 p. 56-62
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/27
    [早期公開] 公開日: 2024/10/31
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕背景:International rotation (IR)は自国で困難な修練を可能とし外傷外科修練にも有用となりうる。目的:筆者の2カ国3施設での外傷IRを振り返り,有用性を考察する。方法:タイのKing Chulalongkorn Memorial Hospital (KCMH)とKhon Kaen Hospital (KKH),南アフリカのTygerberg Hospital (TH)での研修を検討。結果:KCMHの3週間で6例,KKHの5週間で14例の緊急手術に参加し,鈍的損傷と鋭的損傷が同数だった。THでは半年で102例の緊急手術を実施した。鋭的損傷が多く(84%),その半数以上が銃創であった。計8カ月で122件の緊急手術に参加したが,これは帝京大学での3年分に相当した。結論:外傷IRは集中的に症例を経験でき,Acute Care Surgeonの修練に有用である。修練プログラムの正式なオプションとしての整備が望ましい。
症例報告
  • 折原 薫也, 深谷 昌秀, 斗野 敦士, 中根 有登, 平松 和洋
    原稿種別: 症例報告
    2024 年14 巻 p. 63-67
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/27
    [早期公開] 公開日: 2024/03/07
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕症例は51歳女性。呼吸困難を主訴に救急搬送された。著明なアシドーシスを認め,造影CT検査では上腸間膜静脈から門脈に血栓が存在し,空腸壊死を認めた。全身状態不良および腸管壊死領域確定のためdamage control surgery(DCS)の方針とし,トライツ靱帯から壊死空腸を約120cm切除し,吻合せずopen abdominal managementとした。約15時間後のplanned reoperation(PRO)では壊死の進展はなく,十二指腸小腸吻合を行い閉腹した。しかし,術後8日目に再度腸管壊死を認め緊急手術を要した。その後,縫合不全に対して長期のドレナージ治療を行ったが,第105病日に独歩退院した。原因は特定できず,特発性の上腸間膜静脈血栓症と診断した。腸管虚血を伴う重症内因性疾患に対してDCSは有用であるが,疾患によって適切なPROのタイミングを設定する必要がある。
  • 上田 菜保子, 坂平 英樹, 圓尾 明弘, 高岡 諒, 酒井 哲也
    原稿種別: 症例報告
    2024 年14 巻 p. 68-72
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/27
    [早期公開] 公開日: 2024/03/07
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕開放性骨盤骨折は骨盤骨折のなかでも発生率が2~4%とまれであり,直腸や尿道など隣接臓器損傷の合併率が高い外傷である。なかでも直腸や会陰部に開放創があるものはpelvic sepsisと呼ばれる深部敗血症をきたす確率が高く,死亡率は44%ともいわれ最重症に分類される。また,肛門括約筋の再建が不可能なほどの損傷では会陰部の糞便汚染は必発であり,感染のために骨折の再建が遅れ機能予後にも影響する。今回,開放性骨盤骨折に肛門損傷を合併し会陰部創の糞便汚染をきたした症例に対して,感染制御として腹会陰式直腸切断術を行い良好な機能予後を獲得した1例を経験したため報告する。
  • 関 聡志, 岡田 一郎, 小原 佐衣子, 井上 和茂, 米山 久詞, 菱川 剛, 長谷川 栄寿
    原稿種別: 症例報告
    2024 年14 巻 p. 73-77
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/27
    [早期公開] 公開日: 2024/03/07
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕症例は73歳男性。木の剪定中に約2mの高さから転落し受傷,当院へ救急搬送された。CT検査にて後腹膜血腫を伴う右寛骨臼骨折を認め,待機的手術目的に入院となった。第4病日に腹部膨満,嘔吐症状を認め腹部造影CT検査をしたところ,寛骨臼骨折部に腸管が嵌頓し腸閉塞をきたしており,緊急開腹手術を施行し嵌頓を解除した。術後経過は良好であり,右寛骨臼観血的整復固定術を施行後にリハビリテーション目的にて転院となった。寛骨臼骨折の合併症として麻痺性イレウスはしばしばみられるが,骨折部への腸管嵌頓による腸閉塞は非常にまれである。鑑別のためにはCT検査による慎重な評価が重要である。
  • 横野 良典, 蛯原 健, 米田 和弘, 島崎 淳也, 織田 順
    原稿種別: 症例報告
    2024 年14 巻 p. 78-83
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/27
    [早期公開] 公開日: 2024/04/03
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕症例は,27歳男性。交通事故で受傷し,当院搬送となった。FAST陽性のショックを認め,気管挿管後に切迫心停止となり開胸大動脈遮断後に蘇生した。初療室で開腹し,肝損傷へのガーゼパッキングを行いopen abdomen management (OAM)とした。復温,輸血を行い,12時間後に再開腹したところ,総胆管断裂を認めた。胆管を外瘻化後,OAMとした。初回手術から38時間後に胆管空腸吻合による再建を行い,引き続きOAMとした。術後,再建に伴う合併症なく経過したが,腸管浮腫のため閉腹困難となり,植皮術を行い52日目に独歩退院となった。本症例は,肝・総胆管損傷に対してdamage control surgeryと早期の胆管空腸吻合による機能的再建を行い,救命し得た症例である。
  • 新垣 滉大, 寺坂 壮史, 木村 隆一郎, 吉田 真樹, 中村 豪, 日髙 秀樹, 大内田 次郎, 大友 直樹
    原稿種別: 症例報告
    2024 年14 巻 p. 84-88
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/27
    [早期公開] 公開日: 2024/06/21
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕症例は50代,男性。二人組に襲撃され,会陰部を中心に複数箇所を刃物で刺され救急搬送となった。来院時はショックバイタルであり,臀部の創は下部直腸を貫通して尿道断裂をきたしていた。直腸はほぼ半周にわたり全層性の壁損傷を認めた。また,両側内腸骨動脈からの出血を認めたため,経カテーテル的動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization;TAE)を先行した。バイタルサインが安定したのち手術室へ搬入し,尿道断裂および陰囊切創に対して泌尿器科が,皮膚切創に対して整形外科が手術を行った。外科は審査腹腔鏡で腹腔内の損傷がないことを確認した後に,S状結腸で人工肛門造設を行った。会陰損傷は複数臓器の損傷をきたすため,正確な外傷の評価および複数科による総合的な加療を要する。
  • 島田 拓, 長谷川 誠, 久保田 将, 北岡 斎, 工藤 真司, 大崎 慎一, 池田 重雄
    原稿種別: 症例報告
    2024 年14 巻 p. 89-93
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/27
    [早期公開] 公開日: 2024/06/21
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕症例は58歳女性の透析患者。下腹部痛を主訴に当院を初診し,腹部CT検査で骨盤内に遊離ガスを認めたため,下部消化管穿孔の診断で臨時手術を施行した。鏡視下に下腹部中心の高度な炎症所見を認めたが,大腸に異常を認めなかったため小腸穿孔と診断,病変と疑わしき小腸を部分切除した。術中に切除腸管の穿孔部位を確認できず,再度腹腔内を詳細に観察したところ,左卵管基部の穿破部位とそこからの排膿を認めた。卵管卵巣膿瘍穿破による汎発性腹膜炎の診断で洗浄ドレナージを施行した。腹腔内遊離ガスを伴う汎発性腹膜炎においては,本疾患に起因する腹膜炎の可能性も視野に入れるべきである。
  • 板垣 有紀, 佐藤 暢人, 大嶺 律, 幾島 拓也, 金子 司, 城崎 友秀, 森本 浩史, 田中 宏典, 福田 直也, 飯村 泰昭, 平野 ...
    原稿種別: 症例報告
    2024 年14 巻 p. 94-100
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/27
    [早期公開] 公開日: 2024/11/18
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕症例は78歳,男性。肺炎に対する抗菌薬加療中に下腹部痛と血圧低下を認めた。造影CTでは上行結腸から直腸まで連続して浮腫状変化と周囲脂肪織濃度の上昇を認め,便からはClostridioides difficile(CD)抗原および毒素が検出された。劇症型CD腸炎と診断し,保存的治療では改善しなかったため試験開腹術を施行した。手術所見では大腸の浮腫状変化を認めたが,虚血性変化や壁の菲薄化の所見を認めず,回腸瘻造設および大腸洗浄を行った。術後,全身状態は改善した。劇症型CD腸炎に対する外科治療は大腸全摘の報告が多い。今回,われわれは回腸瘻造設と大腸洗浄が有効であった症例を経験したため,文献的考察を加え報告する。
その他
  • 下条 芳秀, 川口 留以, 藏本 俊輔, 室野井 智博, 岡 和幸, 木谷 昭彦, 比良 英司, 渡部 広明
    原稿種別: その他
    2024 年14 巻 p. 101-105
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/27
    [早期公開] 公開日: 2024/06/21
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕【はじめに】当院のrapid response team(RRT)はacute care surgeonがその中心を担うため,surgical RRTの機能を包括している。【対象】2019年4月~2022年3月の3年間,RRT台帳に登録された384例を対象とした。RRT起動前の手術・処置の有無でpost- surgical or -procedural(pSP)群とnon-pSP(NpSP)群に分けて群間比較を行った。【結果】pSP群87例の背景は手術後が最多で59例(67.8%)で,有意に循環の異常が多かった。両群ともに実死亡率は予測死亡率より低かった。【結語】Acute care surgeonが対応要素の一翼を担うRRTはsurgical rescueのみならず,RRT全体に良好な転帰をもたらす可能性が示唆された。今後その有効性についてさらなる検討が必要である。
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