2014 年 58 巻 2 号 p. 147-152
フジコナカイガラムシPlanococcus kraunhiae(Kuwana)の寄生蜂であるフジコナカイガラクロバチAllotropa subclavata(Muesebeck)とフジコナカイガラトビコバチAnagyrus fujikona(Tachikawa)に対する性フェロモンの誘引性を,フェロモントラップとブランクトラップを用いて現地カキ園にて調査した.フジコナカイガラトビコバチはフェロモントラップで捕殺されたがブランクトラップでは捕殺されなかったこと,交信攪乱条件下ではいずれのトラップにも捕殺されなかったことから,本種はフジコナカイガラムシの性フェロモンに誘引され,カイロモンとして利用していると考えられた.一方,フジコナカイガラクロバチは,いずれのトラップでも同様に捕殺され,この傾向は交信攪乱条件下でも変化しなかったことから,本種はフジコナカイガラムシの性フェロモンに誘引されないと考えられた.また,フジコナカイガラムシのフェロモントラップを用いてフジコナカイガラトビコバチの誘殺数の変化を調査した結果,年4回の誘殺ピークがあり,6月以降の誘殺ピークはフジコナカイガラムシの2~3齢幼虫の出現予測時期またはその前にあった.このことから,フジコナカイガラムシのフェロモントラップを用いることで,フジコナカイガラトビコバチも同時にモニタリングできる可能性が示された.