日本応用動物昆虫学会誌
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ウンカ類の翅型に関する研究
III. ウンカ類の長翅型と短翅型における形態的および生理的相違について
岸本 良一
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1957 年 1 巻 3 号 p. 164-173

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抄録
トビイロウンカ,セジロウンカ,ヒメトビウンカについて,いろいろな形質の翅型による差を調べた。
1) 形態的形質についてみると,前,後翅とも長翅型は完全で,短翅型は短く,不完全な発育しかせず,後翅はまったく痕跡的である。小楯板にも同様の差がみられ,長径においてその差がはっきりしている。
2) 後脚の長さ,産卵管長では逆に短翅型のほうが大きく,羽化直後および産卵期間中の平均体重でもこの傾向が見られ,翅を除く一般的体型においては短翅型が大きいと考えられた。
3) 総産卵数は個体による変化が大きく,翅型による差ははっきりしない。同様に成虫寿命においても差ははっきりしないが,産卵期間中の平均体重などとともに考えれば,やや短翅型のほうが,産卵数においてもまさるようである。個体ごとにみて,産卵数と寿命の間にははっきりした正の相関が見られる。
4) 産卵前期間では,短翅型のほうが明らかに短く,低温によってもあまり延長しないが,長翅型では低温によって大きく延長する。
5) 羽化後,水以外の食物を与えず寿命を調べたところ,雌雄とも長翅型のほうが明らかに長い。
6) 羽化後毎日体重を測定したところ,短翅型ではすぐに体重増加が見られるのに対し,長翅型では1∼2日おくれる。これによって産卵前期間の差が生ずるものと思われる。羽化直後から産卵開始までに体重は70∼80%増加する。産卵開始後も平均値を中心に20∼30%の範囲内で上下に変動しながら産卵を続ける。雄では体重の変化はほとんどない。
7) 短翅型-長翅型関係をadult-jevenile関係とみなして,それぞれのもの適応的意義について論じた。
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