日本応用動物昆虫学会誌
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ヤノネカイガラムシの冬期死亡率
大串 竜一西野 敏勝
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1966 年 10 巻 1 号 p. 7-16

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抄録
1. 長崎県大村市において,1963年∼1965年にわたる2回の冬の期間の,ヤノネカイガラムシの越冬期の死亡率を調査した。
2. 個体マークにより生存虫数の減少状態を調査した結果では,1963年∼1964年には越冬に入った雌未熟成虫の97%,雌成虫の84%,雄蛹の92%が越冬中に死亡した。1964∼1965年の冬には同じくそれぞれ91.5%, 95.3%, 97.8%が死亡している。
3. 機械油乳剤を散布した区では越冬期死亡率は更に高く,雌成虫の98∼99%が死亡した。
4. ヤノネカイガラムシ着生葉と,健全葉とで冬季の落葉率にほとんど差がみとめられなかった。
5. 越冬期間中のヤノネの令構成及び生存虫と死殻の比率の移りゆきを調べた所では,ヤノネは各令の幼虫,成虫が混って越冬に入るが,越冬中にだんだんと雌未熟成虫及び成虫,雄2令幼虫及び蛹を主とする構成に変ってゆく。又,生死虫比では雌成虫は越冬期間を通じてほぼ同じ比率を持続するが,その他の令のものは死殻の割合が次第に増してゆく。
6. これまでに調査された各地の越冬期死亡率をまとめて論議を行なった。越冬期死亡率は調査場所や年次によって雌未熟成虫で50∼82%,雌成虫で10∼90%とかなり大きく変動するが,特に越冬個体群の大半を占め,翌年の発生源の主体をなす雌成虫の死亡率の変動に関する諸要因を,更に詳しく追求する必要がある。
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