抄録
リンゴ園においてキンモンホソガのmineがどのような分布をしているかを,平均密度と平均こみあい度の関係から求められる基本集合度指数(α)と密度-集合度係数(β)を算出して検討した。
樹内の場合,果そうを抽出単位として調査した第1世代ではα=0.080,β=1.103,新しょう中位葉を抽出単位とした第2∼4世代ではα=0.138,β=1.054で,いずれも若干のコロニー性を帯びた弱い集中分布をしているとみなされた。一方,第4世代の2次伸長葉ではα=0.467,β=0.949が得られ,低密度での集中分布から高密度での一様分布に変る形を呈していた。
また,樹あたり平均密度とプールされた分散から求めた平均こみあい度をもとに得られるα,βは2次伸長葉の場合を除いて樹内のものより両者とも若干大きな値を示したが,2次伸長葉ではβが樹内のものよりも逆にやや小さかった。これらの樹内および樹間のα,βを用いて,一定精度で園内の密度を推定するための逐次抽出法を検討し,実例として平均値に対する標準誤差を0.1とした場合または標準誤差を0.01(第1世代果そうおよび第2∼4世代新しょう中位葉の場合)および0.05(第4世代2次伸長葉の場合)とした場合のストップ・ラインを求めた。