抄録
潜伏発生の昆虫個体群に働く環境抵抗を,接種によって人為的に野外に構成した個体群を解析することにより検討した。
1971年,札幌市豊平区美園の林業試験場北海道支場樹木園に接種したマイマイガ個体群は,3齢末期から始まったカラフトスズメなどの鳥の捕食によってほぼ絶滅するほどまでに減少した。捕食は多くの鳥で観察されているように,最初は木1本あたりの生息数に無関係に生じたが,その後すぐに密度依存的となり,接種をくり返えして幼虫を追加すれば,6齢までそのまま密度依存的に経過した。
鳥による捕食以外にブランコサムライコマユバチ,ヤドリバエの1種による寄生が認められたが,それらは量的にも少ないうえに,鳥の捕食のあとに死亡をひき起こすため重要な要因とは考えられなかった。