抄録
NS 2662をマウスに投与し,マウス筋肉中の薬量およびアデノシンリン酸含量の変化をしらべた。
1. マウスにNS 2662を経口投与した場合,有機リン剤特有の激しい興奮,けいれん症状を示さず,まひ状態を呈し死亡したが,大後頭孔を通し,脳に直接投与した場合には有機リン剤特有の激しい興奮,けいれん症状を呈し,死亡した。
2. マウスにNS 2662を経口投与し,30分後筋肉中の未分解物および分解物の濃度は10-4M程度であったが,他の有機リン剤では10-5M程度であった。マウスの脳に直接投与した場合には,筋肉中には10-8∼10-7M程度の薬剤が存在するのみで,経口投与した場合に比べ著じるしく少なかった。
3. 殺虫剤中毒時におけるマウス筋肉中のアデノシンリン酸含量をしらべたところ,NS 2662を経口投与した場合にATPの減少が著じるしく大きかった。