ミカンコミバエの成虫について,その強力な誘引剤として知られるメチルオイゲノールへの反応,およびそれに関連した産卵能力について調査した。
人工飼料を与え,飼育箱を用いた25°C定温下の調査において,最初の交尾は日齢10日目以降,産卵は12日目以降から認められた。日齢14日目以降の卵のふ化率は85%以上に達した。また,同条件下で,過半数の雄がメチルオイゲノールに誘引反応を起こすのは日齢9日目以降であることが推定された。
羽化後15日目まで十分交尾させた雌は,雄を除去しても,その後約4か月にわたって有効な産卵を行なうことがわかった。
雄が受精能力を持つためには雌と同様の栄養摂取が必要であり,誘引剤への反応と,受精能力の獲得時期についてのわずかなずれは,相対的に野外においても適用されると推定した。
羽化直後の個体群を,誘殺トラップを常設した飼育箱または屋外網室に放飼し,誘殺および自然死亡個体数を経時的に追跡した。その結果,すべての供試虫が死亡するまでに少数の産卵が認められた。さらに,それらの卵の一部は,幼虫のふ化によって受精卵であることが確かめられた。このことは,誘殺または自然死亡に至る前に,有効な交尾を完了した雄が存在したことを意味する。このような雄の存在は,今後,誘引剤利用による本種の防除に当たって,メチルオイゲノールへ反応しにくい個体群を選択して行くおそれのあることを指摘した。
上記の誘殺試験において,多数の雌が誘殺されるという,野外とは異なる現象が見出された。原因については不明であったが,雌の誘引性の発現には,共存する雄との性比が関与している可能性は少ないことがわかった。
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