日本応用動物昆虫学会誌
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ミカンコミバエの生活史にみられる日周リズム
新井 哲夫
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1975 年 19 巻 4 号 p. 253-259

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抄録

1) ミカンコミバエDacus dorsalis HENDELの生活史の経過にともなういろいろの行動の日周りリズムを,N-LD, N-DD, N-LL, 25°C-DDおよび25°C-LL条件下で調べた(Nは温度が自然条件,LDは日長が自然条件,DDは全暗黒でLLは全照明を示す)。
2) 産卵活動には,1日のうちで最も気温と照度の高い12∼16時にピークがみられた。
3) ふ化には,日周期性はみられなかった。
4) 幼虫のとび出し行動(土中で蛹化するために,餌よりとび出す行動)は,25°C-DDおよび25°C-LLにおいて日周期性はみられなかった。N-LDおよびN-DD(11月下旬)では,日の出前後にピークがみられたが,N-DDでは,N-LDよりピークが少しおくれた。N-LLでは,夜間の低温中のとび出しが多かったが,決まった時刻にピークはみられなかった。
5) 卵から羽化まで25°C-DDおよび25°C-LLに保つと,羽化に日周期性はみられなかったが,N-LD, N-DDおよびN-LL(11月上旬)において,10時頃に羽化のピークがみられた。
6) 幼虫期の環境リズムによって羽化時刻は決定されるが,蛹期の環境の影響によって変更されると考えられる。
7) 幼虫のとび出しまたは培地からの人為的な取り出しと羽化の間には,かならずしも一定の位相関係を認めることはできなかった。

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