日本応用動物昆虫学会誌
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ドウガネブイブイの昆虫ポックスウイルス病
片桐 一正串田 保春日 山平大庭 道夫
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1975 年 19 巻 4 号 p. 243-252

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抄録

静岡県浜北市および奈良県桜井市のドウガネブイブイの高密度野外個体群の幼虫に流行病が観察されたが,病原調査の結果,これは,一種の昆虫ポックスウイルス(EPV)病であることが判明した。野外個体群では,2令後期から3令期で病徴が現われる。病気の進行は緩慢で死亡までの期間は一般に長い。
このEPVは脂肪体および血球を冒す。感染を受けた細胞の細肪質中には,楕球状(Spheroid)と長い八面体状または紡錘体状(Spindle様体)の2種類の封入体が形成される。Spheroidは平均5×8μで大きいものは15μに達する。Spindle様体は4.5×7μ程度のものが最も多いが,大きいものでは長軸が18μに達し,小さいものは1μ以下である。
電子顕微鏡観察によると,Spheroid中には多数のウイルス粒子が含まれており,Spheroid自体は115Åの幅をもった結晶格子状構造をしている。Spindle様体もまた結晶格子状構造をしているが,格子幅は50∼57Åで,中にはウイルス粒子を含まない。
ウイルス粒子は最初,感染細胞の細胞質中に球状の未熟粒子として現われ,次第に内部構造が分化し成熟するにつれてSpheroidたん白質中に包埋されていく。ウイルス粒子の成熟はSpheroid中で完成する。
成熟したウイルス粒子は,長軸4400Å,短軸2500Åの楕球状で表面は桑実状をしている。ウイルスのcoreは一方に湾曲した腎臓型をしており,core shellは2層からなる約200Åの厚さをしている。coreの中には直径約350Åのひも状構造が含まれている。
Spheroid, Spindle様体とも,2つあるいは2つ以上が融合したような異形がみられることもある。
本病はドウガネブイブイの高密度個体群中に高い率で発生し,発病率は場所により85%以上にも達する。感染はすでに7月からみとめられ,感染率は次第に高くなる。発病率は秋から冬に最高になる。

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