日本応用動物昆虫学会誌
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マツカレハ幼虫の発育におよぼす日長時間の影響
山田 房男小林 一三山崎 三郎西野 トシ子
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1975 年 19 巻 4 号 p. 273-280

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抄録

1) マツカレハ幼虫の発育におよぼす日長時間の影響を知るために,主として25°Cで飼育試験を行い,休眠誘起の臨界日長および休眠型と非休眠型の発育経過を産地別にしらべた。
2) 25°Cにおける休眠率50%の臨界日長は,茨城県村松産マツカレハでは15∼15.5時間,鹿児島県山川産では14.5∼15時間の範囲内にあり,休眠率が100%になる日長は,村松産では14.5∼15時間,山川産では13∼13.5時間の範囲内にある。東京都目黒産マツカレハの臨界日長は村松産の値に近いものと推定される。
3) 長日下にあっても,夜間低温という変温条件では休眠率が高まる。
4) 25°C恒温下では,3令あるいは4令以後,休眠型個体の令期間が非休眠型にくらべて長くなる。しかし1令および2令においてはそのような差はない。
5) 非休眠型幼虫は6令で営繭するのが普通であるが5令あるいは7令で営繭する場合もある。その幼虫期間は6令経過では49.9∼72.5日であったが,7令経過ではこれよりも長くなる傾向がある。
6) 5令期または6令期において,休眠型と非休眠型は体色と大きさによって区別できる。
7) マツカレハには,休眠誘起の臨界日長に地理的変異があり,幼虫の発育にもそれぞれの産地の自然条件に適応した経過をたどる特性があると推定される。

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