日本応用動物昆虫学会誌
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マツカレハの生活環の地理的変異
土生 昶毅
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1976 年 20 巻 2 号 p. 55-60

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抄録

マツカレハDendrolimus spectabilisは個体変異が大きく,化性の複雑な生活環が繰返されているようである。ここでは6地方の個体群について越冬状態,越冬後の発育,恒温条件下での発育を調べ生活環の地理的な変異を考察した。
休眠越冬中の幼虫はその頭幅から判定すると北方の個体群では3∼4令で,しかも比較的そろっていた。一方南へ行くにしたがい体が大きく,また大きさにばらつきがみられ,5∼7令もしくは8令であった。越冬幼虫を京都で自然温度下で飼育した時,蛹化までの脱皮回数は北方の個体群ではほとんどが4同でそろっていたが南方のものは1∼4回とばらついた。蛹の生重量は北のものほど軽かった。成虫の50%羽化日は越冬令期の若い北方のものほど早くなる傾向が有ったが,羽化成虫の出現初日は南方の個体群ほど早くなった。羽化期間は越冬幼虫の令期のばらつき方に対応していて,北方の個体群では比較的そろっており(約1ヶ月),南方のものほど長期にわたって連続的であった(約2ヶ月)。
長日,25°Cの恒温条件下で卵から羽化まで飼育したところ,いずれの個体群も成虫羽化が約30日にわたるが,発育完了に要する平均日数は北方の個体群ほど少なくなる傾向がみられた。幼虫の体の大きさや蛹の生重量は北方の個体群ほど少さくなる傾向があった。

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