日本応用動物昆虫学会誌
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ミカンコミバエの羽化の日周期性に対する温度と光の周期の影響
新井 哲夫
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1976 年 20 巻 2 号 p. 69-76

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抄録

(1) ミカンコミバエDacus darsalis HENDELの羽化の日周期性を解析する実験を行ない,次の結果を得た。
(2) 温度周期(25:20°C)を与えると,全暗(DD),全明(LL)のいずれの条件でも温度上昇時刻の頃に羽化が集中した。また明暗周期を与えると,25°Cでは暗→明後2時間以内に羽化が集中したが,20°Cでやや遅れる傾向がみられた。
(3) 温度周期の後に25, 20°Cに移すと羽化リズムが持続されたが,15°Cでは消失した。明暗周期の後には,DD, LLのいずれでも羽化リズムは持続した。
(4) 温度周期(25:20°C,各12時間)の位相を変えると,老熟幼虫を餌から取り出して12日目までの変化ではほぼ新しい周期に同調して羽化するが,13日目では,位相の変化量に応じて異なる結果が得られた。
(5) 蛹化後3日目に蛹を土から取り出し,2∼4日目に明暗周期(25°C, 12L:12D)を180度転換させると新しい周期に同調して羽化したが,7∼8日目だと,もとの周期に同調して羽化した。
(6) 非24時間の温度周期の場合,温度周期が24時間またはその約数に近いと温度周期に同調して羽化するが,それよりずれると温度周期に同調できなくなる。また24時間に近いと羽化のばらつきが小さく,その倍数の周期の羽化のピーク間隔は,約24時間であった。
(7) 暗→明の単一刺激によっても羽化時刻は設定されるが,羽化開始前48時間以内に与えられた場合のみ有効であった。一方,明→暗の単一刺激は効果がなかった。
(8) 温度周期(25:20°C,各12時間)と明暗周期(12L:12D)を組み合わせると,明暗周期に関係なく,温度上昇後2時間以内に羽化のピークがみられた。
(9) 以上の結果から,この種の羽化時計の性質を2, 3指摘した。

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