抄録
東京都北区西ヶ原で採集したカンザワハダニの1個体群を2分し,それぞれESPで淘汰ならびに逆淘汰を行ない,ESP淘汰系統(リン剤抵抗性系統)と逆淘汰系統(リン剤感受性系統)を育成し,これら両系統に対する有機リン系殺虫剤とカーバメート系殺虫剤および過去に共力剤として報告されている化合物の混合施用による共力効果を検討した。
1) ESP淘汰系統は5回,逆淘汰系統は7回の処理でそれぞれESPに対する感受性が均一な個体群である抵抗性系統ならびに感受性系統になったものと思われる。
2) ESPと他の有機リン剤は交差抵抗性関係が認められたが,カーバメート剤とは判然とした交差抵抗性関係が認められない。
3) 有機リン剤とカーバメート剤の混合施用で共力効果が認められたのは,マラチオンまたはPAPとカーバメート剤の組合わせであった。
4) マラチオンまたはPAPとカーバメート剤の混合施用では,有機リン剤とAPCの組合わせを除き,単剤として殺ダニ活性の高いカーバメート剤と有機リン剤の組合わせで高い共力効果が認められた。
5) 有機リン剤とカーバメート剤の混合施用による共力効果は抵抗性系統のみならず,その程度は低いが,感受性系統においても認められた。
6) マラチオンとSCPEのK-1の組合わせで高い共力効果を認めたが,PAPとK-1のそれではほとんど共力効果が認められない。
7) 有機リン剤とSynepirin 500の組合わせで低い共力効果を認めたが,その他の共力剤とはほとんど共力効果が認められない。また,piperonyl butoxideとは拮抗作用が認められた。
8) マラチオンまたはPAPとPHCの混合比を変えて処理した場合,いづれも1:1の混合比で施用した時に最も高い共力効果を示した。
以上,2, 3の有機リン剤とカーバメート剤および共力剤との共力効果について検討した結果,本実験で供試したESP淘汰系統(リン剤抵抗性系統)のマラチオンまたはPAPに対する抵抗性機構の一要因として解毒分解が重要であり,また,ハダニと昆虫の共力剤に対する基質特異性には若干の差異があることが示唆された。