抄録
澱粉,グルコース,スクロースなどの炭水化物がヒラタキクイムシの選択産卵に強い影響を与えることが明らかとなった。雌成虫はそれら炭水化物で処理されたベニヤ板に選択的に産卵し,特にグルコースと澱粉を同時に処理した板が最も産卵に適していることが認められた。また,澱粉とグルコースの間には,選択産卵におよぼす影響に差が認められなかったことから,グルコース等の可溶性糖類は澱粉と同じく選択産卵に関与する重要な物質であることが明らかとなった。
一方,‘tasting mark’数と産卵数との間に正の相関関係(n=35,r2=0.76)が認められた。また卵のほとんどはベニヤ板の導管開孔部より産下されたが,一部の卵はマーク形成により開孔された部位より産下されることが観察された。それゆえ,雌成虫が本マークを形成する理由の1つとして,産卵管挿入部の形成が考えられた。