日本応用動物昆虫学会誌
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性フェロモントラップによるナシヒメシンクイの発生時期の予察
田中 福三郎矢吹 正
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1978 年 22 巻 3 号 p. 162-168

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抄録

1. 岡山農試および全国十数府県での性フェロモントラップによるナシヒメシンクイの誘殺成績を用い,本虫の世代別の発生最盛期を予察する手法を検討した。
2. 岡山での季節的誘殺数の消長では年5回の発生の山が認められた。これらの発生の山から山までの経過日数とその期間の平均気温とから見かけ上の発育零点および1世代を繰り返すのに必要な有効積算温度を計算し,これらを利用して第2世代以降の成虫発生最盛期を予察してみたところ,良好な適合を示した。
3. 全国十数府県における第1世代の成虫発生最盛期の早晩は,前年9∼10月以後からの気温や年平均気温と相関が高かった。
4. 岡山農試の誘殺成績を用いて計算された見かけ上の発育零点11.1°C,および1世代を繰り返すのに必要な有効積算温度383.7日度を用い,各府県における季節的発生消長における第2世代以降の成虫発生最盛期を予想してみたところ,岡山県の場合と同様かなり良い適合を示した。
5. 全国各地における本虫の年間発生回数を1世代を繰り返すのに必要な有効積算温度で,4月から9月までの累積有効温度を除すことによって求めてみたところ,実際の誘殺成績から判定される発生回数とよく一致した。

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