日本応用動物昆虫学会誌
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ミカンハダニのベンゾメート抵抗性
II. 3H-ベンゾメートの表皮透過性と代謝
辰己 勲斎藤 哲夫宮田 正加藤 夏樹添田 吉則
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1983 年 27 巻 3 号 p. 176-182

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抄録

皮膚透過性および代謝実験を進める上で放射性のベンゾメートを用いるため,3-chloro-2, 6-dihydroxybenzoic acidを原料としトリチウム化剤として3H-ジメチル硫酸を用い,4反応行程で3H-ベンゾメートの合成を行った。得られた3H-ベンゾメートの収量は57.7mgでその比放射能は1.09m Ci/mmolであった。
ミカンハダニ5系統を3H-ベンゾメート200ppm浸漬した場合,処理24時間後で興津抵抗性系統では17%しか体内侵入しなかったのに対し,静岡抵抗性,福岡抵抗性系統ではそれぞれ41, 49%,静岡感受性,福岡感受性系統ではそれぞれ60, 66%が体内侵入した。興津抵抗性系統では体内侵入の少なさが抵抗性機構の一つ要因と考えられた。
ミカンハダニ5系統を3H-ベンゾメート200ppm液に浸漬し,処理24時間後に各系統の代謝物を比較した。各系統ともに約60∼75%が3H-ベンゾメートのまま体表および体内に分解されずに存在していた。おもな代謝物はethyl 3-chloro-2, 6-dimethoxybenzohydroxamateであった。各系統間に代謝に関して大きな差はみられないことより,代謝の違いがミカンハダニのベンゾメート抵抗性機構の要因ではないことが示唆された。

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