異なる温度および日長条件下におけるサンゴジュハムシ成虫のサンゴジュ葉の摂食量,ならびに夏眠を経験した個体と未経験個体との摂食量および産卵数の差異を調べ,本種が夏眠を経ることの生態的意義について検討した。
1) 長日条件(15L-9D)下では,飼育開始後,20°C区で25日目,30°C区で15日目以降に摂食量が激減し,いわゆる夏眠状態に入った。しかし,20°C,短日条件(10L-14D)下では夏眠しないで,雌成虫は産卵を開始した。
2) 30°C区の夏眠虫はすべて70日以内に死亡したが,20°C区のそれらは5日以上摂食しない期間があっても少量の摂食を続け,平均254日以上生存した。3) 夏眠中の摂食量について,両温度区間に有意な差がみられなかった。
4) 夏眠虫を短日条件下に移すと,雌雄ともに摂食量は夏眠前のそれにもどり,雌成虫は夏眠を経験しないそれとほぼ同数の卵を産んだ。
5) したがって,本種は夏季には性成熟が抑えられて夏眠に入り,生命維持に必要なだけの摂食を続け,加害樹から移動することもなく,初秋になって産卵を開始するという適応を示しているものと思われる。