抄録
筆者らは1983年2月から10月まで大分県臼杵市で,クロマツ,スギ,ヒノキ,タケ,の各人工林でリンとBHCの分布を調査した。比較として,同じ地域の自然林(針葉広葉混交林)と長野県燕岳山麓中房温泉のヒノキ林で同様の調査を行った。これらの結果を要約すると次のようになる。
1) クロマツ,スギ,ヒノキの各林分でのリンの分布はほとんど同じ値を示したが,タケ林はこれに比べてリンの含量がやや少なかった。
2) 各林分で,食物連鎖が進むに従って,リンの生物濃縮がみられた。
3) 人工林と自然林でのリンの分布は人工林の土壌の含量が自然林のそれに比べてやや高く,自然林のアカネズミのリンの含量は人工林のそれよりやや高かった。
4) BHCの分布はリンとまったく異なり,L層のBHCの含量が最も高く,ついで樹木類の葉のそれであった。樹木類の葉では針葉樹のBHCの含量が高く,その順位はヒノキ,スギ,クロマツと低くなり,タケに含まれるそれは著しく低かった。