日本応用動物昆虫学会誌
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ノシメコクガの休眠に関する研究
II. 幼虫棲息密度と休眠との関係
辻 英明
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1959 年 3 巻 1 号 p. 34-40

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抄録
ノシメコクガをぬかの餌で30°Cの非休眠条件下に飼育しても,幼虫の棲息密度が高くなると肥大して歩きまわる老熟幼虫が現われる。この歩行個体は各温度に対する反応,含水量および体重の変化において,先に報告した本種の休眠個体と全く同じものであることがわかった。
卵50∼400の間の密度増加に伴う死亡率は30gのぬかでは目立たないが,休眠個体が出現し始めかつ増加する。
棲息密度効果の内容としては,1頭あたりの飼料が少なくなることよりも幼虫数が2頭以上であるという条件が1つの手がかりであると考えられ,温度や湿度の上昇増加はこの場合主要な要因とは考えがたく,飼料がよごされることも主要因ではないようである。あるいは幼虫同士の相互刺激が影響をもつかもしれない。
ノシメコクガの休眠幼虫は高温では実際の休眠期間がない。したがってこの型式の休眠が密度に依存して生ずる場合は,休眠個体群が必ずしも休眠期間をもつとは限らず,むしろ移動やその他の質的な変化だけに導かれる場合のある点で興味がある。
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