抄録
1) 茨城県土浦市郊外の丘陵林地で1978∼1979年冬季より7年間にわたりチャバネアオカメムシ成虫の越冬状態を調査した。
2) 林床の落葉両手10つかみを調査単位とし,ハンド・ソーティングにより落葉中より越冬成虫を分離した。
3) 越冬地の方位,林内の状態の差による越冬個体数の差は明確でなく,調査単位当たり個体数の分布集中度,Iδも1に近い値を示した。また,林内で場所的に顕著な越冬個体の分布の偏りも認められなかった。
4) 越冬中の本種に特有な越冬色を呈した死体が落葉中より発見されていないので,越冬期間中の死亡率は低いものと見なされた。
5) 越冬密度は年次変動が大きく,調査期間中,調査単位当たりの平均値で40倍以上の変動幅を示した。
6) 越冬密度の上昇に対して越冬後個体群密度(指標として茨城県筑波郡谷田部町のクワへの飛来個体数および予察灯への誘殺数を用いた)の増加は頭打ち傾向にあると考えられた。