日本応用動物昆虫学会誌
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ミナミキイロアザミウマ個体群の生態学的研究
XII. ナスおよびピーマンにおける被害解析
河合 章
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1986 年 30 巻 3 号 p. 179-187

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抄録
施設栽培のナスおよびピーマンにおけるミナミキイロアザミウマの密度と被害の関係を明らかにすることを試みた。収穫期間(ピーマンでは収穫期間の一部)の密度を一定に保つように,ビニルハウス内に各4段階の密度条件を設定し,寄生密度の違いが収穫量,傷果の発生に及ぼす影響を調べた。
1) ナスでは,葉当り成虫数と幼虫数の間に高い正の相関が認められ,成虫数のみの調査で幼虫数の推移も推定できるものと考えられた。ピーマンでは,花当り成虫1頭以下の低密度時には葉への寄生はみられず,また,花では幼虫の寄生はきわめて少ない。このため,調査部位として花が適しており,成虫数の調査が望ましい。
2) ナス,ピーマンとも,収穫量は密度にかかわらず一定であったが,ナスでは葉当り成虫数の対数値,ピーマンでは花当り成虫数の対数値と傷果率との間に高い正の相関が認められ,傷果を除いた健全果の収穫量との間には高い負の相関が認められた。
3) 健全果収穫量の5%および10%減少に対する被害許容密度は,ナスではそれぞれ葉当り成虫0.08頭および0.17頭,ピーマンではそれぞれ花当り成虫0.11頭および0.24頭と推定された。
4) 小さな傷を許容することにより,被害許容密度は大きな値となった。
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