日本応用動物昆虫学会誌
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トビイロウンカ2系統における幼虫生息密度・日長・温度および稲の発育ステージに対する反応性の比較
岩永 京子藤條 純夫
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1988 年 32 巻 1 号 p. 68-74

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抄録

広範囲の幼虫生息密度で短翅型の雌をきわめて高率に発現させる『広島』群と,密度依存的に雌の長翅型の比率を高める『長崎-I』群の諸形質を一定の条件下に比較した。『広島』群は『長崎-I』群に比べ,幼虫期間は短く,生体重はほぼ同じだが,相対翅長の短い成虫に羽化した。日長(16L, 10L)と温度(25°C, 20°C)を組合わせた条件下での両群の発育経過に差はなく,両群とも短日下で幼虫期間がわずかに延長する傾向があった。『広島』群についての詳細な検討から,いかなる条件下でも休眠と認められるような幼虫期間の顕著な延長は生じなかった。『広島』群の雌は出穂前の稲上で飼育されるとほとんどが短翅型になったが,よりステージのすすんだ稲上では一部長翅型になり,短翅発現性の高い群でも稲の状態によっては長翅型が出現し移動が可能になると示唆された。これらの結果から,日本国内で採集されるトビイロウンカ個体群にみられる大きな変異は光周反応の違いに基づくものではなく,飛来源の相違を反映しているものと推察された。

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