抄録
ヤママユガとサクサンが越冬休眠する形態は,前者では胚子,後者では蛹である。ヤママユガ雌×サクサン雄のF1(正交雑)とサクサン雌×ヤママユガ雄のF1(逆交雑)の発育経過を,12L-12D (25°C)(短日)と15L-9D (25°C)(長日)の2条件のもとで調査した。胚子期の長さ(産卵から孵化までの日数)は,正交雑・逆交雑,および短日・長日で大差がなく,正常胚子では18日以内であった。休眠する胚子は認められなかった。幼虫期の長さ(孵化から吐糸開始までの日数)は,平均で正交雑雌40日,同雄31日,逆交雑雌33日,同雄30日であり,短日・長日の差はわずかであった。吐糸開始から100日を経ても羽化しない場合を蛹休眠と見なせば,休眠率は,正交雑短日雌100%,同雄91%,正交雑長日雌100%,同雄63%,逆交雑短日雌15%,同雄95%,逆交雑長日雌95%,同雄97%であった。以上の結果から,ヤママユガとサクサンの休眠を支配する遺伝的要因について考察した。