抄録
三重県下の周年栽培のキャベツ圃場から1987年の4∼11月の間,コナガの卵,3・4齢幼虫,繭および寄生蜂の繭をほぼ週1回採集して,寄生蜂の種類と寄生率の季節的消長を調査した。
1) コナガの一次寄生蜂としては,卵寄生蜂のメアカタマゴバチTichogramma chilons ISHII,幼虫寄生蜂のApanteles plutellae KURDJUMOV, Diadegma sp.およびMeteorus pulchricornis (WESMAEL),蛹寄生蜂のDiadromus collaris (GRAVENHORST)およびチビアシブトコバチBrachymeria excarinata GAHAN,幼虫-蛹寄生蜂のTetrastichus sokolowskii KURDJUMOVの合計7種を記録した。そのうち,幼虫寄生蜂のM. pulchricornisはコナガから初めての記録であった。
2) コナガの一次寄生蜂のうち,寄生率の高い重要種は,卵寄生蜂のメアカタマゴバチ,幼虫寄生蜂のA. plutellae,蛹寄生蜂のD. collaris,幼虫-蛹寄生蜂のT. sokolowskiiの4種で,調査期間中の寄生率は,それぞれ11.9, 14.9, 36.7および12.0%であった。また,寄生率の高い時期は,それぞれ7月,6月上旬から7,月上旬,6月上旬から7月中旬および7月下旬から9月下旬であった。
3) コナガの二次寄生蜂としては,Trichomalopsis sp. A, Trichomalopsis sp. BおよびHabrocytus phycidis ASHMEADの3種が,一次寄生蜂のA. plutellaeとD. collarisから羽化し,Eurytoma sp.がA. plutellaeとDiadegma sp.から,また,ヒゲナガクロバチ科の1種と幼虫-蛹寄生蜂のT. sokolowskiiがA. plutellaeから,蛹寄生蜂のチビアシブトコバチがDiadegma sp.からそれぞれ羽化し,合計7種を記録した。これらのうち,T. sokolowskiiとチビアシブトコバチはコナガの任意二次寄生蜂であった。
4) 二次寄生蜂の寄生率は全体に低く,最も寄生率が高かった6∼8月採集のコナガの幼虫の一次寄生蜂A. plutellaeとDiadegma sp.の繭への寄生率でも,それぞれ14.8%と13.3%であった。