日本応用動物昆虫学会誌
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生育初期の切葉処理が寒地水稲の生育と収量に及ぼす影響
八谷 和彦
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1989 年 33 巻 2 号 p. 51-56

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抄録

北海道において水稲の幼穂形成期以前に発生する初期害虫による被害を,切葉処理法によって解析した。処理区は,{第4∼9葉,第4, 5葉,第6, 7葉,第8, 9葉}×{主稈のみ,全茎}×{葉身の1/2,葉身全体}の切除を組み合わせた15区とし,1984, 85年に行った。葉身の切除によって,草丈の抑制,生育の遅延,茎数と穂数の減少が認められ,イネクビボソハムシなどで報告されている従来の知見とほぼ一致したほか,以下の知見が得られた。
1) 減収の主要因は,穂数の減少であると考えられた。
2) 補償作用として,年次により有効茎歩合,稔実歩合および千粒重の増加が認められた。補償作用の発現程度は気象条件に左右され,平年を上回る気温が続いたときに現れるが,平年並みの気温では発現は弱いものと考えられた。
3) 全茎の最上位葉の葉身全体を2葉連続して失うと減収が起こると考えられた。また,低温年にはこれ以下の被害量でも減収が起こることが予想された。

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