日本応用動物昆虫学会誌
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ヘリグロテントウノミハムシの生活史に関する研究
II. 寄主植物と発育
井上 大成真梶 徳純
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1989 年 33 巻 4 号 p. 223-230

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抄録
ヘリグロテントウノミハムシの寄主植物について,各種のモクセイ科植物の寄主としての役割を野外観察および室内実験の結果から考察した。
1) 千葉県北部の野外で本種が利用している植物として,モクセイ科の4属11樹種が確認された。これらを利用する方法は,それぞれの寄主植物の季節的生育相により特徴があった。
2) 野外においては,成虫は摂食・産卵寄主として,モクセイ属およびトウネズミモチを除くイボタノキ属を選好した。また,幼虫の生存率はヒイラギモクセイ,ヒイラギおよびネズミモチの3樹種で高かった。
3) 室内において成虫の摂食・産卵選好性を同一生育相の寄主植物で比較すると,その程度は大きいほうからモクセイ属,トウネズミモチを除くイボタノキ属,そしてハシドイ属の順序であった。トウネズミモチやオウバイ,さらに野外では利用されていない各種のモクセイ科植物の選好性はこれらに比較してきわめて劣った。
4) 成虫の食痕形態の比較から,寄主植物によって成虫を一か所にとどめておく働きに違いのあることが示唆された。
5) これらのことを総合すると,本種による被害が近年顕在化したヒイラギモクセイは,成虫の誘引あるいは摂食・産卵の寄主として非常に優れており,また,同一か所に成虫をとどめておく働きも強いと思われた。
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