日本応用動物昆虫学会誌
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果樹用防風樹における天敵相
井上 晃一芦原 亘刑部 正博浜村 徹三
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1991 年 35 巻 1 号 p. 49-56

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抄録

果樹試験場安芸津支場内のカンキツ園の周辺にある防風樹イヌマキとスギで天敵相を6年間調査,また,中国,四国,九州地方のカンキツ園周辺の防風樹を樹種別に捕食性ダニ相について調べた。
1) イヌマキではテントウムシ科8種,キムネタマキスイ科1種,ハネカクシ科2種,クサカゲロウ科1種,カブリダニ科3種ナガヒシダニ科1種,ハモリダニ科1種とクモ類が認められた。スギではテントウムシ科3種,カブリダニ科2種で,これらの構成種はイヌマキの場合より少なかったが,その他の科については両樹種間で差異がなかった。
2) 両樹種ともケボソナガヒシダニが全体の個体数の60∼70%と最も多く,ついでクモ類であった。そのほかに,イヌマキではカブリダニ科,おもにニセラーゴカブリダニとケナガカブリダニが全個体数の約5%,テントウムシ科が約3%,スギではハネカクシ科の2種ヒメハダニカブリケシハネカクシとハダニカブリケシハネカクシが6%を占めた。
3) 防風樹の捕食性ダニ相は,樹種によってかなり異なり,とくにイヌマキでは多くの種が認められたが,優占種はニセラーゴカブリダニとケボソナガヒシダニであった。
4) 以上の結果,果樹園周辺の防風樹における天敵昆虫・捕食性ダニの構成種は,樹種により異なり,また,果樹との共通種が多かった。

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