日本応用動物昆虫学会誌
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ハスモンヨトウの耐寒性と越冬に関する研究
III. 越冬に必要な環境条件に関する実験的考察
松浦 博一内藤 篤菊地 淳志
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1991 年 35 巻 1 号 p. 65-69

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抄録

発育零点以下の低温に毎日一定時間遭遇する変温条件下でハスモンヨトウの3∼4齢幼虫を飼育し,越冬を想定した3か月以上の長期生存が可能となる諸条件を調査した。
1) 低温条件下で幼虫が3か月以上の長期にわたって生存するためには,所定量の発育有効温量と食物摂取が不可欠であった。この間に幼虫はゆっくりと次の齢期に発育したが,個体による発育差が大きく,その間の脱皮回数は1回から3回のものまで認められた。
2) 0°C以下の低温に毎日一定時間遭遇する変温条件の下で幼虫が3か月以上の長期にわたって生存するには,1日当り0.9日度以上の発育有効温量が必要であり,1日に占める0°C以下の継続時間が長くなるほどより多くの発育有効温量を必要とした。
3) 幼虫の生存期間に及ぼす0°C以下の低温の影響は,その低温にさらす時間によって異なった。1日5時間以内のときは0°Cも-2°Cも同程度であったが,10時間では-2°Cの影響が0°Cより明らか大きくなり,幼虫の生存期間が短縮した。
4) 幼虫を毎日2時間ずつ-5°Cにさらし,残りの時間を15°Cで飼育しても,生存期間は40日あまりであり,-5°Cは越冬に不適な限界低温と考えられた。1日2時間ずつ-7°Cにさらした場合,生存期間はさらに短く最長でも2週間程度であった。

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