日本応用動物昆虫学会誌
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スギマルカイガラムシのエステラーゼアイソザイム変異
宮ノ下 明大田付 貞洋草野 忠治藤井 宏一
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1991 年 35 巻 4 号 p. 317-321

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抄録

スギマルカイガラムシAspidiotus cryptomeriae KUWANAのスギ寄生個体群,カヤ寄生個体群およびイチイ寄生個体群について雌成虫のエステラーゼのアイソザイムを検出し比較した。1989年と1990年に複数の地域から供試虫を採集し比較したところスギ,カヤ両寄生個体群からは合わせて16本のバンドが確認できた。これらのうち,両者に常に出現したバンド,または各寄生個体群に特有のバンドはなかったが,出現頻度ゼロのバンドが両者で異なっていた。また,年や地域によってバンドの出現頻度が異なっていた。
三つの寄生個体群に共通して高頻度(0.70以上)に現れたバンドは2, 5, 13であり,共通して活性が高く現れたバンドは2, 5, 11であり,これらはスギマルカイガラムシの主要バンドであると思われる。
スギ寄生個体群では15本のバンドを確認し,バンド7が高頻度に出現しなおかつ活性が高くバンド10, 12が検出されなかった。カヤ寄生個体群では15本のバンドを確認しバンド11が比較的出現頻度が高く,バンド3の活性が高いことが特徴でありバンド16が検出されなかった。イチイ寄生個体群については,1990年のみの結果であるが,14本のバンドを確認しバンド4, 9, 15が高頻度に出現し,バンド9, 15の活性が高くバンド7, 8が検出されなかったことがスギ,カヤ両寄生個体群と異なっていた。
これらの結果は,各寄主植物に対するスギマルカイガラムシの特殊化を示していると思われる。しかし,本実験は20個体をまとめて試料として用いており,個体単位のアイソザイムの検出によって,さらに検討することが必要であろう。

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