日本応用動物昆虫学会誌
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ワタアブラムシの薬剤抵抗性に関する研究
第1報 ナスとキュウリに寄生する個体群のアリエステラーゼ活性と有機リン剤感受性
細田 昭男浜 弘司鈴木 健安藤 幸夫
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1992 年 36 巻 2 号 p. 101-111

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抄録

1987∼1990年に広島県立農業試験場(東広島市八本松町)内の同一圃場に雨よけビニールハウスと露地区を設けナスとキュウリを栽培し,ワタアブラムシの春季の発生状況,各植物の寄生個体のアリエステラーゼ活性,タンパク量,フェニトロチオン感受性およびフェニトロチオンの防除効果を検討した。
1) ビニールハウスに設置したポット植えのナスとキュウリ上の春季の初期発生は植物間で異なり,ナスでは急激に増殖したが,キュウリでは一部に寄生が見られたにすぎなかった。また,雨よけビニールハウスおよび露地区のナスとキュウリ上での初期発生も,ナスでは急激な増殖が見られたが,キュウリ上での発生は遅かった。
2) 雨よけビニールハウス区のナスに発生したワタアブラムシでは,アリエステラーゼ活性の低い個体が優占し,キュウリでは高活性個体が優占した。しかし,ナス寄生個体群の中にも高活性個体が混在し,その頻度は秋期に高まった。また,露地区のナスでは早期から高活性個体の頻度が高かった。
3) ワタアブラムシにはナスに寄生する酵素活性の低いタイプと高いタイプ,キュウリに寄生する酵素活性の高いタイプと低いタイプの4タイプが確認されたが,キュウリに寄生する酵素活性の低いタイプが優占することはなかった。
4) アリエステラーゼ活性の個体変異に及ぼす薬剤散布の影響は,薬剤散布によって高活性個体の頻度が高まる場合と,その影響が明瞭でない場合とがあった。
5) ワタアブラムシに対するフェニトロチオンのLC50値は,アリエステラーゼ活性と平行し,キュウリ寄生個体群のLC50値はナス寄生個体群に比べ2∼12倍高かった。フェニトロチオン乳剤の圃場における防除効果も,ナス寄生個体群に対して高く,キュウリ寄生個体群に対して低かった。

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