日本応用動物昆虫学会誌
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モンシロチョウ個体群の自然死亡率および死亡原因について
伊藤 嘉昭宮下 和喜後藤 昭
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1960 年 4 巻 1 号 p. 1-10

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抄録
1) 1956年の4月から7月にかけて,農業技術研究所構内の網を掛けたキャベツ畑において,モンシロチョウ個体群の自然死亡率およびそれに関与する要因を調べた。
2) 個体数の減少は,第2世代でも第3世代でも,卵から1令幼虫にかけての時期,終令幼虫期およびよう期に特に著しく減少した。その結果両世代とも,前報(宮下・伊藤・後藤,1956)で報じた1955年春と基本的特性において同一な3段型の生存曲線が得られた。ただし総死亡率は両世代とも1955年春の調査結果より低く,特に第2化期は低かった。
3) 卵から1令にかけての時期の死亡率には,1954年盛夏の世代を除くと年または世代によってあまり大きな違いはなく,それに関与する要因は主として密度に依存しない性格のものであるように思われた。また,卵の時期の死亡は総卵数の10∼20%と推定された。
4) 1956年には幼虫寄生バチであるアオムシコマユバチの寄生率が1955年に比べて低く,特に第2化期の寄生は皆無で,これがこの年のモンシロチョウ個体群の総死亡率を低めた主な原因だと思われる。さなぎ寄生バチであるアオムシコマユバチの寄生率は1955年と1956年であまり差がなかった。どちらの寄生バチも世代が進むにつれてその働きを増して行くように思われた。5) 病気の発生は2化期より3化期のほうが多かった。また前報および本報の調査を通じて最高の発病率は1954年盛夏の世代でみられた。
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