抄録
1) 5齢の第1日から第7日までのカイコを使って,in vivoで後部絹糸せんの核酸およびタンパク質への32P, 14C-グリシンなどの標識化合物の取り込みを調べた。実験方法としてミクロオートラジオグラフが用いられた。
2) DNAはこの期間中合成されない。RNAは第2日ごろに合成が最も盛んであり,またタンパクの合成は3日以降急激に盛んになり,6日,7日ごろが最盛期である。このようにRNAとタンパク質の合成期がずれていることは,RNAとタンパク質は同時合成の必要がないということになろう。
3) 32Pと14C-グリシンとでは,RNAへの取り込まれ方が異なっていて,2日ごろ32Pが細胞質の絹糸せん外周部のRNAに多く取り込まれているのに,14C-グリシンは核内のRNAにのみしかはいらない。また,RN-ase処理後のいわゆるコーアの部分のRNAには,32Pも14C-グリシンもはいり込まない。核内のタンパク質への14C-グリシンのはいり方は,どちらかといえば絹糸せんの内周部に多い。