日本応用動物昆虫学会誌
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スミスハキリバチの営巣習性
片山 栄助
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1997 年 41 巻 3 号 p. 153-160

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抄録

スミスハキリバチの営巣習性について,1973∼1996年に栃木県北部の各地で調査を行った。
1) 本種は7月末∼9月中旬に営巣活動をする1化性種で,好適営巣地は植林後間もないスギやヒノキの林,平地の雑木林や管理不良の空き地などであった。
2) 営巣場所はすべて地中の浅い坑道で,深さ4.9∼12cm,直径は8∼12mmであった。これらの坑道のうち,1例はジグモの古巣の地中のトンネルを利用していたが,それ以外はすべてハチが自力掘坑したものであった。
3) 完成巣の巣口は葉片や土砂等で密封されず,開口したままであった。1巣当たりの巣室数は1∼3個で,1個の例が多かった。
4) 本種の巣室では最内側の葉片も,ハチの口部から分泌された粘着物によって接着されていなかった。この点は本種の巣室構造の重要な特徴である。
5) 巣室作成に使用される葉片の形態は,既知種のそれと大差なかった。しかし本種は地中掘坑性であるのに,巣室底壁に円形葉片(A-3葉片)を使用している点は,他種と異なっていた。1巣室当たり使用総葉片数は平均38枚で,ハキリバチ属の他種よりも多かった。
6) 貯食,卵,繭の形態などの特徴は,既知のハキリバチ属の他種と大差なかった。

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