日本応用動物昆虫学会誌
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家蚕5令期の飼育温度とヒブロインおよびセリシンの造成
重松 孟竹下 弘夫
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1962 年 6 巻 1 号 p. 46-52

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抄録

5令期飼育温度と絹たんぱく質の造成との関係を調べ次の結果を得た。
1. ヒブロインの生成速度は飼育温度が高いほど大であった。その増量加速度曲線には飼育温度に関係なくΔ4に山が存在していた。セリシンの生成速度は25°の場合が最も大きく,30°は25°より小さかった。その増量加速度曲線にはヒブロインの場合と同様に飼育温度に関係なくΔ4に山があった。絹糸せん内絹たんぱく質に対するセリシンの量比は30°の場合,ほかの温度に比べて小さいが,虫体の絹たんぱく質造成の終わりころには各温度ともほぼ同一の値になっていた。更に,各飼育温度下で生産した繭の練減率はほとんど等しかった。
2. 体成長に対する絹たんぱく質の相対的な増量のありさまを調べ,ヒブロイン,セリシンとも5令の一定の発育段階に対応した3つの直線が引かれ,各温度ともIの直線は5令4日目まで,IIの直線は5令4日目と5日目のあいだ,IIIの直線は5令5日目以降の発育段階に対応していた。
3. 中部糸せん内の絹たんぱく質に対するヒブロインの量比は飼育温度が高いほど大であった。後部糸せん全体に対するせん腔内ヒブロインの量比は30°の場合きわめて速く高くなった。また後部糸せん内ヒブロインの増量は30°が最も速かった。一方,後部糸せん組織の成長は30°では速く停滞し,その最大成長時の組織重はほかの温度よりも小さかった。
4. 繭層重の各飼育温度間のふれはヒブロイン合成の最盛期と考えられる3日間の後部糸せん組織重の和におけるふれと比例していた。
5. 後部糸せんによるC14-グリシンのin vitroにおけるヒブロインへのとりこみ反応による方法を用いて,この絹糸せんによるヒブロイン合成能を算出した。

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