日本応用動物昆虫学会誌
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イネ黄萎病ウイルス保毒ツマグロヨコバイの脂肪組織
高橋 保雄関谷 一郎
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1962 年 6 巻 2 号 p. 90-94

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抄録

イネ黄萎病ウイルスの媒介昆虫であるソマグロヨコバイの細胞組織学的研究を行ない,次の事実を明らかにした。
1. 媒介昆虫は保毒に伴い,体内脂肪組織に明りような異状を示す。
2. ウイルスに感染した初期において,脂肪細胞の核はぼう大し,しかも核内は強いフォイルゲン反応を呈する。また細胞質も強いピロニン好性を示し,細胞機能の異常な活性化を想像させる。
3. しかしその後,核はいくらか不整形になって縮少し,しかもメチルグリーン染色やフォイルゲン反応が弱くなり,また細胞質には多数の空胞が認められ,ピロニン染色性も低下し,細胞全体がいくらか収縮するようである。
4. そして最後にウイルスをイネに媒介できるころには,細胞の収縮が著しく,細胞質内には大小いろいろの空胞が充満して網目状をなし,核および細胞質ともに染色性は著しく低下し,減退した細胞像を示す。
5. なお,上記の脂肪細胞の異状は個体によって若干例外的な像を示すことがある。

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